[特別対談 第23回]

進化する蓄電技術

CONNEXX SYSTEMS 塚本壽社長 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。今回のお相手は、新種のバインド電池(BIND Battery™)を製品化して注目を集めるコネックス・システムズの塚本壽社長だ。進化する蓄電技術というテーマで会談した。

土肥氏●再生可能エネルギー業界では、蓄電池が非常に注目されています。蓄電技術によって再エネは完成された基幹電力になり得るからです。多くの企業が様々な蓄電池を製品化していますが、なかでも貴社の取り組みは非常に先進的です。そこで今回は、蓄電池の技術動向について、お話しいただければと思います。

 

塚本氏●私は大学を卒業後、GS日本電池に入社し、20年近く新型電池の開発に従事しました。世界最薄のボタン電池を開発したり、ウォークマン用に充放電可能な電池を製品化したり、非常にやりがいのある仕事を経験させていただきました。

ただ、40代の半ばで、米国の会社からインプラント用の、人体に埋め込む医療用電池の開発依頼があった時です。GS日本電池としてはお受けできなかったのですが、病で苦しむ患者を救うためには誰かがこの事業に取り組まなければとの思いが日増しに強くなり、米国行きを決意しました。

GS日本電池には、後ろ髪を引かれる思いもありましたが、半年の準備期間を経て、米国でクオリオンという会社を立ち上げ、インプラント用の電池を開発しました。米国では軍事用の蓄電池開発にも携わるなど、多くの経験を積み、充実した日々を過ごしていたのですが、2011年3月11日に発生した東日本大震災の惨事、計り知れないダメージを受けた日本の姿を異国で傍観していることができず、帰国してコネックス・システムズを設立しました。

 

土肥氏●米国に渡り、最先端の蓄電池開発をされてきたのですね。ところで、貴社は、リチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池を組み合わせるバインド電池という新しい蓄電池を開発されましたが、この発想はどこから生まれたのでしょうか。

 

塚本氏●軍用輸送機の非常用電源として搭載されていた鉛蓄電池をリチウムイオン蓄電池に置き換えるプロジェクトに携わったのがきっかけです。開発を進めるうちに、鉛電池がバスラインに流れ込む過剰電流を吸収して電圧安定に寄与している効果が非常に大きいことに気づきました。これはリチウムイオン蓄電池にはない機能なので、軽くて高性能なリチウムイオン蓄電池の特長を生かしつつ、鉛蓄電池の機能も活用できないかと考え、思いついたのがバインド電池でした。

 

土肥氏●リチウムイオン蓄電池と鉛蓄電池には、それぞれ強みと弱みがあるため、2つを併用することで弱点を打ち消そうという発想には将来性を感じます。既存の技術を組み合わせて新しい価値を創造するのは、日本人の得意領域ですから、貴社の技術が日本で熟成され、やがて世界をリードする革新技術へと発展すれば、この上ないです。

ただ、蓄電池には課題がいくつかあります。主にリチウムイオン蓄電池に対するものですが、まず、蓄電池ブームに火がつくと、安価で粗悪な製品も世に出るでしょうから、安全性が気になるところです。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち)1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。