[特別対談 第20回]

分散型電源の明日

エナーシス・ジャパン 鈴木浩二代表 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。今回は、産業用鉛蓄電池世界最大手、米エナーシスの鈴木浩二日本法人代表をお迎えして、分散型電源の明日というテーマで意見を交わした。鈴木代表とは2回目の対談である。

土肥氏●太陽光発電業界では、いよいよ蓄電池の普及が本格化しそうな状況です。住宅用太陽光発電では、すでに販売力のある販売・施工会社さんが、住宅用蓄電池を販売していますし、来年度には補助金も復活するようなのでさらにドライブがかかるでしょう。産業用でも、スーパー過積載といって、低圧太陽光発電所でありながらパネルの出力を200kW以上に増やし、蓄電池を併設して夜間売電するモデルが登場しました。

このような状況を鑑みると、2018年は蓄電池の本格普及元年になるのではないかと期待してしまいます。そこで本日は鈴木代表をお迎えして、太陽光発電や蓄電池を組み合わせた分散型電源は近い将来どのように普及していくのか、お伺いできればと思います。

 

鈴木氏●米電力大手コン・エジソンの管轄にあった3基の原発のうち、2基が老朽化し営業を停止したのですが、それよって夏場のピーク時に電力需給が逼迫する問題が生じました。電力の需給状況はデュレーションカーブで表されますが、コン・エジソンが示したデュレーションカーブは破綻状態でした。

その結果、コン・エジソンが何をしたかというと、夏場のピーク時に電力需要を下げてくれる需要家に奨励金を払うというものでした。当初kWあたり800米ドルだったものが、現在は2100米ドルまで値上がりしています。日本円で20万円以上です。つまり、電力会社は、発電所に投資するよりも、需給管理に投資してピークを抑える方が電力インフラの強靭性も増し、経済合理的だと判断したのです。

これに当社の蓄電容量400kWhの蓄電池が利用されました。1年半の実証試験を経てコン・エジソンから認められ、奨励金がおりることになったので、1基6000万円以上もする高額な蓄電池が報奨金のおかげで3年以内に償却できるようになったのです。

 

土肥氏●需要に対して供給が不足する場合、不足しないよう供給設備を増やすというのが、従来の考え方です。それが、経済性を追求すると、需要を抑えるために、あるいは需要を制御するために投資した方が合理的だということになった。米国の電力業界では発想の転換が起きているのですね。

 

鈴木氏●はい。ただ、これは日本も同じです。たとえば沖縄電力は、石炭火力発電所1基と石油火力発電所が2基あったのですが、割高な石油火力発電所を2基とも停止することになりました。それによって電力需給が逼迫しています。恐らく沖縄電力は、経済合理的にどのようにインフラを強化していくべきかという課題を抱えているはずです。

この状況下、政府はエネルギーリソースアグリゲーションという概念を示しました。分散型電源の余剰発電能力を集めて電力需給を整えるために活かそうというわけです。電力インフラを経済合理的に強化するには、配電側の分散型電源を活用する必要があるのです。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。