[特別対談 第19回]

未来を変える単結晶技術

ンジ・ソーラー・テクノロジー 秦超社長 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長とキーパーソンの特別対談。今回は、単結晶シリコン世界最大手、中国ロンジグループの日本法人を率いる秦超社長をお迎えして、単結晶技術の可能性について意見を交換した。

土肥氏●高品質と低価格という2大要求は、あらゆる製品に共通する普遍的なニーズですが、メーカーにとっては両要求を同時に叶えることは非常に難しいことだと思います。事実、多くの太陽電池メーカーさんが両面を追求して開発に腐心されていますが、現実には、恐らくほぼすべての製品がどちらかに偏っているように思えます。

しかし、貴社の単結晶技術。これは、高品質と低価格の双方を満たす画期的な革新を起こす製品ではないかと、非常に期待しています。そこで、本日は単結晶技術の可能性についてお話をお伺いできればと思います。ではまず貴社の歴史や取り組みからお話しください。

 

秦氏●ロンジが単結晶シリコンインゴットとウエハの生産を始めたのは2000年です。創業者の李振国が、大学で物理学を専攻し、インゴットの引き上げの現場で経験を積んだ後にロンジを設立した経緯があるので、当社は創業時から一貫して単結晶技術を磨いてきました。14年からパネルの生産も始めましたが、生産するセル・パネルはすべて単結晶型です。

年産能力は増やしています。インゴットとウエハは現在の12GWから年末までに15GWへ、来年末には25GWまで拡張します。パネルは現在5GWですが、年末に7GWへ増強し、来年末には10GWまで引き上げます。

 

土肥氏●圧倒的な生産規模ですね。単結晶だけでそこまでの生産能力を保有している企業はどこにもありません。単結晶の需要が世界的に拡大しているということなのでしょうが、貴社は主にどの市場へ製品を販売しているのでしょうか。

 

秦氏●単結晶ウエハは世界各国に出荷しています。恐らく単結晶セルを生産されているセルメーカーさんの多くが当社のお客様です。ただ、パネルは14年から2年間は中国国内に限定して販売していたので、海外展開は今年からです。日本以外では、欧米諸国とインド、そして豪州でも販売していますが、海外向けのパネル販売はトータルでも400MW程です。

 

土肥氏●日本市場への進出が後発ながら、貴社はパネル販売を好調に伸ばされているようですが、貴社のパネルがブルームバーグの「ティア1」に入っているなど、信用面の高い評価も関係しているのでしょうか。

 

秦氏●調査会社から評価していただいておりますが、エンドユーザーの認知は充分でなく、日本市場ではこれからだと思っています。今後も貴社のような有力な商社さんのお力をお借りして拡販していければと思っています。

信用面は、当社の財務を見て評価いただいたのでしょう。当社は、お客様に価値ある製品を継続して提供していく方針です。適正な利益を確保していますから財務は健全です。上海証券取引所に上場しているので、決算書を見ていただければお分かりいただけると思います。特徴的なのは、毎年売上高の5%を研究開発に充てていることでしょう。研究開発にはかねてより力を入れ、専用の200MWラインで日々開発に勤しんでいます。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。