アンフィニの大望 福島工場を「世界一」に

太陽光パネルメーカー、アンフィニ(大阪市浪速区、親川智行社長)の福島新工場建設。市場が縮小しているだけに、大胆な決断のようにも思えるが、同社の親川社長には確かな勝算と大望があった。

同社は今年7月に福島県楢葉町で年産能力400〜500MWの新工場を稼働させた。最新設備を導入し、全自動生産ラインを配備。品質向上とコスト低減を進め、出力315W、変換効率18.52%の高効率パネル『SOLAR NINJA』を主力に量産する体制を築いた。

ただ気になるのは、ファブレスメーカーとして成長を遂げた同社が、市場が縮小しつつある今、なぜ日本に工場を建てたのか、だ。

親川社長は、「例えば、日本だけを見ても重塩害地や豪雪地など設置環境は多様です。その環境に合う特性を持つパネルがあれば、太陽光発電が活躍できる場所は増えるはずです。そのような〝こだわりのパネル〟を製造していくにあたり、他社のラインだけでは限界があり、自社工場が必要でした」と説明する。

さらに、親川社長は、新工場でパネルの品質検査を請負う考えも示し、「最新設備で最良の材料を使って製造しても、数%は基準に満たないパネルが生産されます。それを見逃さないためには、徹底した出荷前検査が必要なのです」と訴える。

確かに、アンフィニは公称最大出力に満たないパネルは一切出荷しないが、現実には、最大出力値の±3%は誤差の範囲と捉えるメーカーが存在し、不具合リスクの高いパネルが市販されている。他社製品もアンフィニの品質基準で検査し、品質の良し悪しを見極めることによって、業界内のパネル品質の底上げを図ろうというわけだ。

その一方で、同社は他のパネルメーカーとのアライアンスを模索しており、親川社長はこう方針を語る。

「お互いの首を絞め合うのではなく、同じメーカーとしてどこかで協力できないかと考えています。年産能力500MWのメーカーが20社手を組めば、10GWの巨大なメーカーになります。材料の調達力も高まり、世界各国にパネルを販売する際は、互いの販売ルートを活用し合えます」。

また同社はOEM(他社ブランドでの生産)の依頼を積極的に受託していく方針だ。国内外のメーカーを問わず、小ロットから受付けている。同社にしてみれば工場の稼働率を高く維持でき、海外勢にとっては〝メイドインジャパン〟を顧客に訴求できる。とくに中・台メーカーは欧米諸国のアンチダンピング制裁の回避手段としても有効だ。国内メーカーにとっても、製造拠点が日本にあれば大きな安心感を得られるだろう。

(左)年産能力400〜500MWのアンフィニ新工場(右)工場の内観。最新の設備を導入し、全自動製造ラインを配備した