[特別対談 第17回]

太陽光、基幹電源への課題

SMAジャパン 今津武士代表取締役社長 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長とキーパーソンの特別対談。今回はPCS(パワーコンディショナ)の製販で世界トップを走る独SMAの日本法人、SMAジャパンの今津武士社長だ。太陽光発電が基幹電源になるために超えるべき課題とは何か、意見を交わした。

土肥氏●FITが始動して5年が経過し、製品の品質、施工の品質は向上し、コストも劇的に下がりました。ただ、太陽光発電が日本の基幹電源として電力インフラの一端を担えるようになるためには、まだまだ課題があります。太陽光発電の大量導入による系統安定化対策もあれば、太陽光発電所が周辺環境に悪影響を与え、地元住民から不満の声が上がっているといった問題もあります。

そこで今回は、太陽光発電所の心臓部であるPCSを世界各国に拡販され、各地で広く支持されていらっしゃる貴社に、太陽光発電が基幹電源になるためには何が必要か、設備メーカーのお立場からお話しいただければと思います。

 

今津氏●ここ数年、日本の太陽光発電市場は急速に拡大し、異業種からの新規参入が相次いだので、確かに、経験の浅い方が建設された、批判されても仕方のない太陽光発電所もあります。

ただ、EPC(設計・調達・建設)業者さんを訪問させていただき、最近思うのは、事業者さんへの利益の最大化はもちろん、電力インフラや周辺環境への影響まで細かく考慮されている点です。深堀した議論をされていらっしゃるので、非常によい傾向だと思います。

 

土肥氏●議論を深めれば深めるほど、PCSは貴社の製品に行き着くのではないでしょうか。当社はいま、アフリカで複数の業者と案件開発を進めているのですが、温度特性や環境特性、パネルとの相性など、様々な条件を考慮すると、最終的に貴社の25kW機が最適だという結論に至りました。

貴社は世界で最も競争が厳しいとされるインド市場で年間1GW販売されていらっしゃるようですが、その意味がよく分かります。

 

今津氏●それは非常にありがたいことです。実は土肥さんにお伝えしたいことがありまして。間もなく系統連系用のソリューションを日本で発表します。蓄電池メーカーさんや電機メーカーさんと協議を重ね、9月1日(東京)と4日(大阪)に蓄電池とPCSによる新しいソリューションを含めた大型PCSの発表会を開きます。今回の商品は、数十MW規模の大型蓄電池を系統とつなげて出し入れをするPCSです。まさに太陽光発電が基幹電源として成長していくうえで欠かせないソリューションです。SMAは日本の系統安定化のために貢献していきます。

 

土肥氏●それはとても楽しみですね。世界を見れば、新設される発電所のなかで、最も多いのが太陽光発電所です。もはや電力インフラとしていかに太陽光発電を使いこなしていくかという時代に入ったと私は実感しています。そのなかで、日本は蓄電池を活用していこうという方向でしょうから、貴社の新しいソリューションは意義深いものだと思います。

実際、当社にも、北海道で案件を開発しておられるお客様がいらっしゃいまして、ちょうど、どう進めていくべきか、議論しているところでした。

ところで、貴社は日本に進出されて6年目になりますが、サービスの方が増えられたと聞いていますが。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。