[特別対談 第14回]

ドイツに見るPVの未来

日本再生可能エネルギー総合研究所 北村和也代表 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。今回は、再生可能エネルギー分野のコンサルティングを手掛ける日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也代表を迎えて、ドイツに見る太陽光発電の未来を考える。

土肥氏●再生可能エネルギーの普及拡大から電力自由化まで、時に失敗もありましたが、世界的に見て先行している国はドイツでしょう。そこで今回は、ドイツの再エネ事情に詳しい北村さんをお迎えして、「ドイツに見るPVの未来」というテーマでお話しさせていただければと思います。

ところで、北村さんは最近、ドイツのシュタットベルケに倣って、地域エネルギー会社の立ち上げに尽力されていらっしゃると聞いております。

 

北村氏●はい。最近になってシュタットベルケのような組織を日本に広めようとする動きが出てきましたが、シュタットベルケ自体、新しい組織ではありません。エネルギー供給や生活インフラの運営を担う地域の事業体のことで、ドイツでは100年以上前に組織化され、現在900程あります。

自治体が出資しているケースが多いのですが、それは、各地に電灯やガス灯が点ったときに、それらの管理団体として自治体の支援のもと誕生した経緯があるからです。やがてシュタットベルケは、電力やガス、水道の販売から交通に至るまで、公共サービスを手掛けるようになります。

よく、地域のエネルギー会社というと、地域資本の発電所を連想される方が多いのですが、私がお手伝いさせていただいているのは、発電所の開発というよりは、エネルギーを調達して地域に供給するエネルギーのハンドリングを担う会社づくりです。地域資本で、地域でつくったエネルギーを地域に供給する仕組みづくりを目的としています。

 

土肥氏●なるほど。地域内のエネルギー循環を目的とすると、地域の再エネ発電所だけでは片手落ちで、やはりエネルギーの調達・供給を担う会社が必要です。発電所の開発に比べれば、比較的小資本で進められますし、とても現実的な取り組みですね。たとえば、ドイツのシュタットベルケで、ハンブルグエナジーという会社がありますが、彼らの自給自足モデルは非常に面白いと思います。

 

北村氏●ハンブルグのような大都市になると、再エネの自給自足、とくに生産が難しいのですが、ハンブルグエナジーは域内100%再エネを目指しています。特に水素を活用して全面水素バスに置き換えようとしているところが特徴的です。ドイツでは、水素を活用するにしても、再エネ電源による水の電気分解で製造した水素しか評価しないなど、徹底しています。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立し、代表取締役に就任。