[特別対談 第8回]

専業と協業

ESI 土肥宏吉社長 ✕ インリー・グリーンエナジージャパン 山本譲司社長 ✕ CO2O 酒井正行社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長による特別対談。お相手は、太陽電池世界大手インリー・グリーンエナジーの日本法人を率いる山本譲司社長と、太陽光発電所の評価・診断で定評のあるCO2Oの酒井正行社長だ。旋風を巻き起こす3社のトップが経営観を語り合った。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年ドイツで太陽光関連企業を設立。12年に太陽光専門商社ESIを設立、代表取締役に就任。

土肥氏●インリーさんは日本で太陽光パネルの販売を大幅に伸ばされていますが、興味深いのは、貴社がCO2Oさんとパートナーシップを結ばれていることです。パネルメーカーとO&M(発電所の管理・保守)会社の提携は非常に珍しいのですが、どのような経緯があったのでしょうか。

 

山本氏●JIS Q 8901に係る保証体制の構築を施設管理会社に委託し、2012年8月に日本で初めて認証を受けたのがきっかけです。その技術陣がCO2Oさんに加わったこともあり、当社とCO2Oさんとの取引が始まりました。

日本において2013年から実質3年半で2GW以上出荷していますが、特別高圧案件から低圧案件まで全国各地を回っているなかで、2MW未満の高圧案件では意外とO&Mが軽視されていることに気がつきました。今はCO2Oさんと主に高圧発電所向けのO&Mを提案しています。

 

酒井氏●発電が落ちると、何もかもパネルのせいと思われがちなので、当社は、インリーさんに代わって現地に赴き、発電低下の原因を客観的に検査して事業主さんに報告する業務を任されてきたのです。それが、発電所のデューデリジェンス(評価・診断)に関するノウハウや知見の習熟につながり、今では多くの方々にサービスを提供させていただいております。ですから、当社があるのはインリーさんのおかげなのです。

 

土肥氏●パネルは太陽光発電の顔なので、パネルメーカーはどうしても目立ってしまいます。ただ、発電トラブルの5割以上が施工に起因するものですから、事あるごとにパネルメーカーのせいにする風潮は困りものですね。問題の本質を見失ってしまいます。

ともあれ、インリーさんは日本で展開するためにCO2Oさんが必要だったわけで、CO2Oさんもインリーさんからの業務委託から事業を発展させたということなので、両社は非常に良好な関係を築かれている。まさにこのような専業と協業が今後は重要です。

と申しますのも、先行しているドイツでは、激しい企業間淘汰が進んだ結果、残ったのは、パネルやPCS(パワーコンディショナ)、EPC(設計・調達・建設)、O&Mなど各領域のスペシャリストだけでした。そしてそのスペシャリスト同士が協業や統合を繰り返しています。同様のことは今後日本で起こるでしょうから、リソースは少なくとも、唯一無二の専門性とパートナーシップ。これが企業存続のカギになると思います。

 

酒井氏●おっしゃる通りです。当社が身を置くO&Mの領域でも、今後はより専門性が求められると思います。一般にO&Mというと、EPCや事業主に任されたことだけを引き受けるケースが多いのですが、それは必ずしもお客様のニーズを満たしていません。

そもそも、発電所は各々特性が異なるので、まず発電所のリスクを見極めていくべきなのです。私は、O&Mとは、リスクマネジメントと同義語だと捉え、リスクを極小化するためのO&Mメニューを発電所ごとに作成し、実施しながら評価していく。そしてパフォーマンスを高め、発電所という資産の価値向上を目指すべきと考えます。当社は専門性を高めながら、サービスの拡充を図っていきます。

 

山本氏●PVメーカーにとっての専門性とは、パネルの品質における専門性、あるいは優位性だと思います。当社が短期間で2GWものパネルを日本で販売できたのは、根底に品質重視の哲学があったからで、昨年の供給難の状況下でも、当社のパネルをご購入いただいたリピータのお客様は、当社のパネルの品質が良くシミュレーション値よりも20%以上発電するから選んだと言われます。つまり、会社の財務体質云々ではなくパネルが本来の役目をきっちりと果たしてくれることが第一なのです。とはいえ、品質に絶対はありませんから、アフターサービス体制も整え、お客様には絶対の安心を提供していきます。

プロフィール●山本譲司(やまもと・じょうじ) 1977年東京都生まれ。2003年同志社大学卒業後、大林組入社。05年マクニカ入社。14年インリー・グリーンエナジージャパンに入社し、15年同社営業統括部長、16年代表取締役社長に就任。