なぜファーウェイPCSが選ばれるのか

2013年にPCS(パワーコンディショナ)の製造を開始して以来、世界各国に販路を開拓してきた中ファーウェイ(華為技術)。なぜ同社のPCSが選ばれるのか。その理由を探るべく、中国のメガソーラー2基を視察した。

メンテ効率、飛躍的に向上

営農型発電所では地面からパネルまでの高さが5mもあり、目視点検や赤外線カメラによる異常発見が難しい。また、アレイ間が広く発電所の巡回は決して楽ではない。ファーウェイ製PCS搭載のスマート故障診断があれば、これらの課題を解消する。

中国山東省最大の都市、青島。市内の国際空港から車を1時間走らせると、出力20MWの太陽光発電所が姿を現した。約67万㎡の土地に8万枚の太陽光パネル、そしてファーウェイ製40kWのPCSが約500台設置してある。

ただ一風変わった趣だ。パネルは地上5mの高さにある。アレイ間は広く開けられ、一般的な20MWの発電所と比べると、敷地面積は約3倍もある。そう、営農型太陽光発電所なのだ。今年6月に稼動したが、今後パネルの下にビニールハウスが建てられ、野菜や観賞用植物を栽培するらしい。

ならばメンテナンスは簡単でないはず。広大な土地を隈なく歩き回る苦労に加え、パネルが高い位置にある。目視点検や赤外線カメラによる異常発見に手間がかかることは察しがつく。

しかし、O&M(保守・管理)を請け負うサラナスは、特段苦労はしていないという。「ファーウェイ製PCSに搭載されたI-Vカーブ測定による『スマート故障診断』がメンテナンス効率の向上に一役買っているから」(サラナス)だ。

I-Vカーブ測定によるスマート故障診断とは、ファーウェイ製PCSの独自機能である。PCSと管理システムにより、遠隔からストリング単位でI-Vカーブを測定し、そのデータをビッグデータ解析により集計した過去の故障の傾向と照合して異常の原因を特定する。この機能があれば、O&M業者は広大な敷地を歩き回って1台ずつPCSを検査する必要はない。適度に測定し、異常を検出した場合のみ現地へ向かえば済む。

発電量を測定する機能だけでは、出力低下を検出しても、故障かどうか即座に判断できず、現地で確かめなければならない。ただ同発電所でパネルを1枚ずつ検査するには、脚立で作業する必要があり、非常に手間がかかる。故障かどうか不確かなまま調査に赴けば、出力低下の原因を突き止めるまでに長い時間がかかるが、こうした面倒をスマート故障診断は解消する。

しかも、中型PCSは大型PCSに比べ、1ストリングに接続するパネルの枚数が少ないので、ストリング単位でI-Vカーブを測定すれば、O&M業者は故障パネルの位置をおおよそ特定できる。

サラナスによれば、大型PCSを採用した別の発電所で出力低下が起きた際、原因特定まで脚立の上り下りを何度も繰り返さねばならなかったが、ファーウェイのPCSに替えてからその必要はなくなったという。

PCSの重量は55kg。二人で軽々と持てる