[特別対談 第5回]

日の丸太陽光の気概

アンフィニ(ジャパンソーラー) 親川智行社長 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長と業界のキーパーソンの特別対談。今回は『ジャパンソーラー』ブランドのもと、太陽光パネル製造で成長路線を歩み続けているアンフィニの親川智行社長をお迎えして、日本の太陽光企業が持つべき気概について語り合った。

土肥氏●FITによる10kW以上の太陽光発電の買取り価格が24円まで下がり、最近は太陽光事業から撤退する企業が増えてきました。しかし私は、これからが正念場ですし、FITの恩恵で力をつけた日本の企業は、日本の太陽光業界を牽引していくという責任を持つべきだと考えます。

そこで今回は、日本でFITが始まるかなり前から原料のシリコン事業を端緒にパネルメーカーとして業績を伸ばしてこられた貴社に日本の太陽光企業としての強みをお伺いできればと思います。ではまず、日本のマーケットは今後どう動くと思われますか。

 

親川氏●日本よりも早くFITが導入された国々を見ていると、おおむねFIT導入から3年間は市場が急拡大しますが、その後は減速し、さらに3年を経て縮小しています。ですから、日本でもメガソーラーの新規開発は確実に減っていくでしょう。漠然と太陽光事業を進めてきた企業は今後厳しくなると思います。

しかし、50kW未満の屋根上設置はまだまだ潜在需要が見込めますし、住宅用太陽光も新築を中心に搭載率は伸びるはず。自家消費の市場が創出され、蓄電池が普及すれば状況は一変するでしょう。太陽光発電の唯一の弱点は、日照条件に左右される部分ですから、蓄電池でそこを補えれば、商品価値は劇的に向上します。モノやサービスをきっちりと提供してきた企業は生き残っていけると思います。

蓄電池に関しては、非常用電源という利用範囲ではなかなか導入は進まない。日常的に利用しながら緊急時にも使えるものでなければ、100万円もの高額な商品は富裕層しか購入できません。電気自動車や電動バイクなどのバッテリーと住宅用太陽光との連携がカギになると思っています。

 

 

土肥氏●太陽光システムの自家消費利用が進むと、これまで以上に太陽光パネルの長期耐久性が求められるでしょう。20年間の長期耐久性と、よくいわれますが、背景にはFITによる20年の買取り期間があって、この間パネルが安定して発電し続けてくれればということですから。しかし自家消費利用となれば、パネルの使用期間が長ければ長いほど、電気代の節約になります。

 

親川氏●おっしゃる通り。だからこそ当社は、太陽光パネルの長寿命化を目的にバックシートをガラスに代えた両面ガラスパネル等の開発も行ってきました。当社のパネルの設計寿命は35年ですが、これを40年、50年へ伸ばしていきます。

当社は2000年代初頭、シリコンを輸出しながら世界の大手パネルメーカーとの取引を通じてパネルの製造ノウハウを蓄積してきました。その経験から思うことは、バックシートや封止材などの材料に何を使うか、そして出荷前検査をどれだけ厳しい基準で実施するかによって、パネルの寿命に大きな差が出るということです。当社の強みは「メイドインジャパン」。すなわち品質に優れた日本メーカーですから、長期耐久性を含めて品質には一切妥協しない方針です。

そして、FIT売電を活用して投資利回りを追求しているお客様のニーズに応えていく考えです。というのも、FITによる20年の売電期間で利回りを計算すると、買取り価格が下がるにつれ、利回りは低下します。しかし発電期間が40年に延びればどうか。20年後はFIT価格で売電できないにしても、電力市場が開かれたので市場に販売できます。20年以降の事業利益を考慮すれば、パネルの長寿命化によって利回りを高められるのです。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年独ミュンヘンで太陽光関連企業を設立。12年7月に太陽光専門企業ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションを立ち上げ、代表取締役に就任。14年4月にはO&M世界大手のグリーンテック社と提携、日本で先進的なO&Mを展開している。