山佐がメガソーラーを開発する理由
単独で500MWへ 32円案件も購入検討
スロットマシンの製販から航空機や船舶のリースまで多角化経営で業績を伸ばす山佐(岡山県新見市、佐野慎一社長)。数千億円のバランスシートを生かしてメガソーラーを開発し、ID保有案件はすでに343MWに達した。同社の狙いとは。
「できることなら、太陽光発電所を500MW運開したいと思っています」。
佐野社長は、「2017年3月まで」と期間を定めて太陽光発電所の開発に意欲的だ。条件は、買取り価格40円もしくは36円の案件だが、条件がよければ32円案件の購入も検討するという。
国内の太陽光市場では、設備認定を取得して電力会社への接続申し込みを終えたプロジェクトでも、20GW以上の案件が滞留していると言われている。ブローカーによる権利売りも阻害要因のひとつのようだが、無制限の出力抑制による金融機関の貸し渋りや、上位系統の張り替えに対して発電事業者が工事費を負担できないなど、資金面で難航している例も少なくない。
しかし17年4月に改正FIT法が施行されれば、無情にも滞留案件は一掃され、開発機会そのものが失われかねないのだ。残された時間は1年しかないのである。
それだけに、佐野社長は、「我々が力になれることがあるかもしれません。たとえば、一時的に必要な工事費負担金は、当社であれば案件によって自己資金で用意することも可能です」とし、「諸事情で事業化が難しく、売却を希望される方は、ぜひとも当社に声をかけてください」と強調した。
ではなぜ山佐は太陽光発電所の開発を強めているのだろうか。その理由を探るには歴史を辿る必要がある。
山佐は今年で創業49年目を迎える。その山佐の前身となる佐野商店は1868年に創業し、木炭の製造に始まり、以降、鉄道枕木を国鉄に納入する製材業を営んでいた。
飛躍を遂げたのは、1970年に佐野慎一氏が3代目社長に就任し、コンピュータ制御技術による日本初のスロットマシンを世に出してからだ。スロットマシンメーカーとして全国展開を強め、業績を大幅に伸ばしたが、浮き沈みの激しい事業でもあった。そこで86年には経営基盤の安定化を目的に航空機や船舶のリース業に着手。以後、航空機の保有台数を着々と増やし、現在は182機と、国内トップの実績を誇る。