ウエストHDの新構想
エネルギーで地方創生
エネルギーで地方を創生するという壮大な構想を掲げるウエストホールディングス(広島市、吉川隆会長兼CEO)。太陽光発電のEPC(設計、調達、建設)やO&M(管理・保守)に加え、省エネ設備と電力の複合販売を本格化させた。同社のビジョンに迫る。
「既存の販売ルートを活用して、省エネ設備と電力の販売を始めました。従来は太陽光1本でしたが、商材を増やしたのです」。
吉川隆会長は、グループのウエスト電力が始めたサービスをこう簡潔に説明したが、背景には大きなビジョンがあった。
昨年のCOP21を機に政府はCO2排出削減向け、省エネを推進している。一方で、今年4月から電力小売りの全面自由化がスタートし、電力の需要家が電力の購入先を選ぶ新しい時代に入った。この変化を捉えて、ウエストは〝省エネ・エスコ+新電力〟、すなわち省エネ設備と電力のセット販売を本格化させたのである。
一般の省エネ事業は、客先の照明器具や空調設備を省エネ効果の高い設備に取り換えて電力消費量を削減することによって従前の電気代との差額で設備の導入費を回収できることを提案し、省エネ設備を販売する。
これに対し、ウエストのサービスは、省エネ設備とともに必要に応じて安価な電力を販売し、電力消費量とともに電力単価も削減する。しかも省エネ設備の初期導入費やメンテナンス費用を顧客に代わってすべてウエストが負担するため、顧客は負担ゼロで新しい設備を使用できる。ウエストは顧客から電気代の削減分をサービス料金として5〜10年にわたって徴収し、設備を償却するのである。
資金は、これまで太陽光事業などを通じて関係を築いてきた地方銀行の融資を活用する。地方が疲弊し優良顧客が減少している地銀にとって、新たな投資先の獲得に繋がるわけだ。
吉川会長は「キーワードは設備を所有するか、利用するかです。自治体は財政がひっ迫しており、設備を更新するための費用を捻出できないところが多いのです。当社と契約していただくと、負担ゼロで設備が新しくなります。長期契約ですから何か起こっても我々が対応するので、任せきりでいいわけです」。
対象は、学校や公民館など自治体の保有する公共施設のほか、オフィスビルやホテル、商業施設などの高圧受電家。今夏にもウエスト電力の電力供給量は100MWに達する見込みだ。
まさに省エネを推進してCO2を削減するという国の政策と合致し、かつ地方自治体と地方銀行を中心に地域経済の活性化に寄与する地方創生ビジネスだ。多くの賛同を得られやすいのは言うまでもない。
ウエストは今後、省エネ設備と電力に加え、太陽光システムや蓄電池、EMS(エネルギー管理システム)も提案し、エネルギーのトータルソリューションを提供していく考えである。