[特別対談 第2回]

O&M業者の選び方

横浜環境デザイン 池田真樹社長 × ESI 土肥宏吉社長

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長が業界のキーパーソンと語り合う特別対談。第2回は、太陽光のEPC(設計・調達・建設)からO&M(管理・保守)まで展開する横浜環境デザインの池田真樹社長を迎えて、「O&M業者の選び方」について意見を交わした。

日本のO&Mは発展途上

池田氏●日本では、O&Mが始まったばかりで、技術的にはまだ低い水準です。遠隔監視や駆けつけだけでは不充分で、きっちりと分析し、予防保全できるレベルまで向上していかなければならないのですが、まだその水準まで達していないと思います。

しかし現場では、実際にトラブルが発生していますから、発電事業者は徐々にO&Mの重要性に気がつき、よりよいサービスを求めて業者を選ぶようになってきました。

 

土肥氏●製品もそうですが、トラブルが起こって始めて正しい認識が浸透していくのでしょう。初期は、売電収入が途絶えるリスクを恐れるあまり、パネルメーカーが保険に加入しているかどうかといったことに関心が偏っていましたが、最近はPCS(パワーコンディショナ)などの周辺設備やケーブル、配線など、設計・施工にも目が向けられるようになりましたね。

 

池田氏●おっしゃるとおりで、トラブルの原因が、設備ではなく、工事や設計に問題があるケースが大半です。本来であれば、施工についても、第三者がデューデリジェンス(評価・診断)や中間検査を実施した後に、発電所が納入されるべきだと思います。

簡易な監視装置+駆けつけ=O&Mという認識が広まっていますが、そもそもO&Mとは、デューデリジェンスから運用管理まで幅広い領域を差す言葉です。太陽光発電所は20年間、電力インフラの一翼を担う発電所として、たとえば火力発電所のように計画的に運用管理されるべきで、そのためのO&Mなのですが、日本ではO&Mの技術水準が低く、言葉も正確に使われていないのです。

 

土肥氏●火力発電所や製造業の工場では、定期的に保守・点検の期間をあらかじめ設けて、メニューを組んでいます。それが当たり前なのですが、太陽光発電所は、メンテナンスフリーが出発点でしたから、トラブルが発生したときは、保険で対処すればよいという考えが定着していました。

ともあれ、太陽光発電所の施工経験が豊富なEPCでありながら、O&M業者としても活躍されていらっしゃる貴社が、他のEPCが建設した発電所のO&Mをおやりになられるのですから、EPCに対する注文もあるでしょうね。

 

池田氏●当社は、昨年後半から、他社が建設した発電所のO&Mも引き受けるようになりました。現場を見ていると、設計思想が全く異なる粗悪な発電所もあって、当社はEPCに不備を指摘しますから、もう喧嘩ですよ。それでも主張しなければ、太陽光発電の信頼が揺らぎかねませんし、施工の技術も向上しませんからね。

EPCも悪気があってやっているわけではなくて、コストを叩かれますから安く仕上げようとする。当社もこれまで失敗を重ねてきたので事情は分かります。しかし、なかには長期信頼性に著しく欠けた発電所もあって、知らず所有している発電事業者もいらっしゃいます。そういう意味では、O&M業者はデューデリジェンスの技術を磨いて建設の不備を一定の根拠を持って証明できる技量は身に着けておくべきでしょう。

 

土肥氏●今後も発電所は建設されるので、EPCには20年のO&Mを前提とした設計をぜひ取り入れてもらいたいですね。たとえば、大規模な発電所になると、接続箱にタグが貼ってあるかそうでないかで、O&Mの業務効率は大きく変わります。設備にタグを貼るのは、一般の産業用プラントの建設では常識です。

プロフィール●土肥宏吉(どひ・こうきち) 1973年東京都生まれ。97年一橋大学商学部卒業後、遠心分離機大手の巴工業に入社し海外営業に従事。2011年独ミュンヘンで太陽光関連企業を設立。12年7月に貿易商社ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションを立ち上げ、代表取締役に就任。14年4月にはO&M世界大手のグリーンテック社と提携、日本で先進的なO&Mを展開している。