[第58回]
容量拠出金対策②
新電力による拠出金転嫁の現況
2024年4月より新電力会社に容量拠出金が課せられることとなり、その負担を販売価格に転嫁する動きが出てきた。アンプレナジーの村谷社長が解説する。
村谷敬(むらたに・たかし)
1980年生まれ。群馬県出身。成蹊大学法学部法律学科卒。行政書士。エナリス、エプコで培った電力自由化業界の経験を基礎に、電力ビジネスのコンサルティングを行う。エネルギー法務を手がける村谷法務行政書士事務所の所長を務め、2017年にAnPrenergyを設立、代表取締役に就任。
容量拠出金を販売価格に転嫁する小売電気事業者の動きを見ると、販売電力量が多い企業ほど慎重だ。2024年4月現在、大手電力会社からは転嫁の動きが見られず、東京ガス、エネット、大阪ガス、エネオス、SBパワーなども容量拠出金を約款に定める気配はない。
一方、中小規模の新電力会社は価格転嫁に積極的である。特に、22年度のJEPX(日本卸電力取引所)約定価格の高騰で損失を大きく出した企業にとっては、容量拠出金の負担を自社で吸収することが財務上難しいという事情もあるのだろう。
ただ、これは顧客に悪い印象を与えかねない。新電力会社の多くが23年度に託送料金の上昇に伴う値上げと、規制料金の値上げに追従した値上げを実施しており、24年度は一部の新電力会社だけが、大手電力会社が行わない値上げをするのだ。電力消費者は一部の新電力会社だけの度重なる値上げと捉えることだろう。
容量拠出金の転嫁方法は、企業によって異なり、まず、kWあたりの単価設定と、kWhあたりの単価設定に大別される。
kWあたりの単価設定とは、夏季・冬季の容量拠出金の算定基準日時における新電力会社の総電力需要のうち電力消費者ごとの使用電力量割合を求め、その割合に応じて単価を掛け合わせるというもの。夏季・冬季の最大電力需要を賄う電源の確保を目的に容量拠出金は徴収されるため、夏季と冬季に電力を多く使う電力消費者に相応の負担を求めるという点で、この単価設定は制度の趣旨に合致している。もっとも、当該時間帯の電力消費者の電力量を個別に把握しなければならない点においてシステム上対応可能かどうかなど課題もある。
一方、kWhあたりの単価設定は、電力消費者の使用電力量に応じて課金する仕組みで、新電力会社にとっては単純に転嫁できるため利点はある。だが、小中学校やワイナリー、農業関連施設など、夏季と冬季の電力消費が小さく、容量拠出金引き上げへの関与の薄い電力消費者が、夏季と冬季の電力消費が大きい海の家やスキー場などの電力消費者と同じ負担を負わなければならない点において公平性に欠ける部分もある。
現に、kWhあたりの単価設定で容量拠出金を販売価格に転嫁する新電力会社には、電力消費者からの問い合わせが多いと聞く。