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エネルギー基本計画案に見えた太陽光発電の確かな勝算

経産省が5月16日に取りまとめたエネルギー基本計画案に対して批判が多い。再エネを「主力電源」にしていく方針こそ掲げたものの、30年時の目標を改めなかったからだ。だが、括目すれば、太陽光発電の勝算が見えてきた。(本誌・岡田浩一)

今回のエネルギー基本計画の見直し案は大きく2点改定された。1点目は50年に向けた長期展望を加えたこと、2点目は再生可能エネルギーを『主力電源』にしていくという方針を打ち出したことだ。

だが、「前回の改定から3年しか経っておらず、計画の骨格は変える必要がない」(世耕弘成経産大臣)との考えを崩さず、原発20〜22%、再エネ22〜24%という30年時の総発電電力量に占める電源比率は改めなかった。

それだけに、審議会で委員を務めた辰巳菊子日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会常任顧問は、「パリ協定の発効や国連によるSDGs(持続可能な開発目標)の採択など環境は一変した。再エネを主力電源にしていくと決めたにも関わらず、30年の目標を変えないのはおかしい」と指摘する。

これに対し、見直し案では、「4年前の改定時と比べ、30年時の技術動向に変化がない」としたうえで、「現状、火力発電に依存しており、(再エネは)脱炭素化電源ではない」と断言。さらに、「蓄電池などと組み合わせれば、脱炭素化電源となり得るが、(再エネは)コストが高く、開発途上だ」と厳しい評価を下した。

一方、新しく追加した50年に向けての長期展望についても、「不確実だが、可能性もある」とし、多様な選択肢による『複線シナリオ』で政策を進めるという方針を示したに過ぎず、具体的な数値目標は定めなかった。

それゆえ、審議会委員の橘川武郎東京理科大学教授は、「複線シナリオの考え方自体はいいが、ならば、原発が0%の場合、15%、それ以上など、3つくらいのシナリオは出すべきだ。それができないのは、原発の議論が進まなかったからだ」と批判的だ。さらに橘川教授は、「原発優先であるにも関わらず、原発の議論を先延ばしにしているせいで、再エネも後回しにされている」と苦言を呈した。

審議会の分科会長を務めた坂根正弘小松製作所相談役は、会議の終わりに「今回のエネルギー基本計画の意義は50年視点を入れたこと」と前置きしたうえで、「原発に対する基本スタンスの議論くらいは始めなければまずいとこれだけ言っても、行政が突破できないことは分かった」と締めた。

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