国内最大メガソーラー 再始動も、前途は多難か
5年間停滞していた国内最大のメガソーラー計画が再始動したとの発表があった。長崎・宇久島に480MWもの太陽光発電所を建設する夢の一大事業である。だが山積する課題は未解決のままだ。
長崎県佐世保市からフェリーで3時間半。人口2000人余りの宇久島に巨大な太陽光発電所を建設する話が浮上したのは、ちょうど5年前の春先だ。約630万㎡の土地に京セラ製の太陽光パネルを172万枚設置し、用地の約7割を占める農地で営農用太陽光発電を行うというもので、発電した電力を64㎞に及ぶ海底ケーブルで九州本土まで送電する壮大な計画だった。
この宇久島のメガソーラー事業は、ドイツの投資会社フォトボルト・デベロップメント・パートナーズが売電単価税抜40円の設備認定を取得し、13年4月に立ち上げた。同年5月には地元の有力者、赤木順二氏が『宇久島メガソーラーパークサービス』を設立、1000人に及ぶ地権者との土地の売買や貸借交渉を進めたという。そして14年6月には、九電工と京セラ、オリックスが共同出資で発電事業を運営するSPC(特別目的会社)を設立、みずほ銀行からプロジェクトファイナンスを受けるスキームを発表した。
だが、一向に完成の知らせはなく、小誌が17年1月に宇久島を訪れた時も建設が進んだ形跡は見られなかった。背景には大きく3つの課題があったとみられる。
第1に、フォトボルトDPによる売電権の売価吊り上げだ。設備認定を取得したフォトボルトDPは、売電権を売却して高利を得ようと、「SPCに対する売価を著しく吊り上げていた」(関係企業の担当者)というのだ。ただこれについて、九電工は否定し、フォトボルトDPは「コメントできない」と回答。真偽のほどは定かではない。
第2に、資金調達だ。建設費が想定以上に嵩み、当初1500億円と見積もっていた予算が大幅に膨らんだことももちろんだが、最大のネックは無制限・無補償の出力抑制案件となったことだろう。売電単価40円といえども、九州電力から無制限・無補償に出力抑制をかけられるのだから、融資のハードルは上がる。
第3に、海底ケーブルを敷設する海域の漁業組合との交渉難航だ。工事に際し地元漁協が漁業補償を求める例は珍しくないが、漁協と交渉した宇久島在住の大岩博文元市議は1年前の小誌取材に対し、「交渉した3組合のうち、権限を握る佐世保市漁業協同組合の片岡一雄組合長が了承しなかった」と証言。片岡組合長は水面下で金銭を要求した模様で、関係者の暗躍が進行を妨げた可能性もある。