デンカシンキの失敗と挑戦
新電力、第3者所有のリスク露見
愛媛県松山市で太陽光発電設備を販売するデンカシンキが経営難に陥った。新電力や第3者所有事業で痛手を被っていた。だが、メガソーラーを売却して危機を脱し、巻き返しを図る。再建できるのか。
2000年に創業したデンカシンキは、住宅向けに太陽光発電設備の販売・施工を手掛け、11年9月期には13億円まで売上高を伸ばした。だが16年9月期には減収に転じ、8400万円の営業赤字を計上、保有するメガソーラーを手放して最終赤字は免れたものの、17年9月期には1.7億円の最終赤字に沈み、債務超過に陥った。結局、2基目のメガソーラーを売却して最悪の事態は乗り越えたが、いまなお経営不振が続いている。
なぜここまで業績が悪化したのか。理由は2つの新規事業が影響したようだ。
ひとつは新電力である。15年5月、木村賢太社長は全額出資して『坊っちゃん電力』を設立し、デンカシンキの社員20人を坊っちゃん電力に出向させたが、「坊っちゃん電力の初年度売上げはゼロだった」(木村社長)。四国は、四国電力の電気代が安く、17年10月末時点で新電力への契約切替率は3%と低調な地域だ。顧客の獲得に苦戦したのだろう。
この電力小売りの販売不振は本業に影響した。当時のデンカシンキの社員数は約70人で、うち20人が1年に亘ってデンカシンキの業務から外れたため、16年9月期には売上高が3.7億円減少し、営業赤字に陥った。
さらに、電力の調達資金の確保も経営を圧迫した。電力販売で得た利益は電力調達費の支払い期日以降に入金されるため、一定期間、手元の現金が不足しやすい。特に電力需要が高まる夏と冬は調達費が嵩み、資金の確保は容易ではない。このため、同社は昨年後半、資金不足から取引先への支払いが何度か遅れたことがあったようだ。
木村社長は「新電力事業のキャッシュフロー管理がここまで大変だとは想定外だった。しっかり予測をして計画を立てなければならなかった」と肩を落とす。
ともあれ、新電力事業は薄利だ。坊っちゃん電力の場合、17年5月期は売上高約8億円に対し、営業利益は1000万円を下回っており、営業利益率は1%程度だ。今期は売上高32億円を予想するも、営業利益は1500万円ほどしかない。
「一時は坊っちゃん電力の売却も検討した」という木村社長は「本来我々のような企業が手を出す事業ではないのかもしれない」としつつも、「太陽光発電設備販売から始めた企業として、設備の施工やメンテナンスから電力供給までお世話したい。現在は顧客数が1万件を突破し、新電力事業だけで利益が出るようになった」と語る。