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〝未稼働の象徴〟宇久島プロジェクトに立ち塞がる壁

進展しない農地転用と漁業権問題

そこで、小誌は17年1月に宇久島を訪れたが、状況は変わっていないように思えた。島内の一部には、建設開始の看板が掲げられていたが、建設業者の姿も建設が進んだ形跡もない。ある島民は、稼働後に毎年60万円の土地賃料が入るというが、「いつまでも開発が進まんけん、みんな参っとる」と呆れた口調で話す。

接続契約と用地契約をクリアしても開発が進まない理由として考えられるのは、大部分の発電所が営農用であることだ。UMSPSが農業委員会に提出した資料では、事業用地730万㎡の内、約68%の500万㎡が農地だとされている。営農用の太陽光発電所を建設するには、農業委員会の審査を通過し、許認可を得る必要がある。

そこでUMSPSは、営農用による作物の育成を実証するため、16年8月から太田江地区の土地5aを一時転用した。ただ、農業委員会は大規模な計画に対して実証試験の規模が小さいことなどを指摘している。また、農業委員会には現時点で、「最終の計画が示されておらず、申請が出ていない」(佐世保市農業委員会事務局の牟田雄介氏)状況であり、今後も時間を要することは必至だ。

もう一つの課題は、海底ケーブルの敷設である。これについては〝漁業権〟の壁が立ち塞がる。

宇久島と九州本土の海域では、複数の漁業組合が漁業権を持つ。敷設工事を進めるには、彼らの了承を得なければならないが、漁業組合が「工事中に漁業が中断することや、騒音等により魚が住みつかなくなること」(九州のメーカー筋)を主張し、事業者側に補償を求め、交渉が難航するケースがあるようだ。

実は、前出の大岩元市議は、漁師出身の経歴を活かし、漁業組合などと交渉していた。佐世保市長に贈賄を試みたのも「送電海底ケーブル敷設に伴う佐世保港港湾区域等内の占用許可申請の受理、審査手続等に関し、有利便宜な取り計らいを受けたいため」(佐世保地裁、裁判書より抜粋)であり、交渉に苦心した末の過ちであったとみられる。

大岩氏は、島で誰もやりたがらなかった市議会議員に手を挙げ、往復3時間、約9000円かかる佐世保市への渡航代も自費で負担しながら、島のためにメガソーラーの誘致に尽力してきた人物らしい。16年5月に佐世保地裁から懲役1年、執行猶予3年の判決を受け、現在は宇久島で再び漁師業を営んでいる。小誌が大岩氏を訪ねたところ、漁業組合との交渉について「交渉した三組合の内、二組合は問題なかった。ただ、佐世保漁協の片岡組合長が権限を握っており、了承を得られなかった」という。

さらに、「宇久島は10年後に人口1000人を割ってしまい、我々の面倒を見てくれる人はいない。国の言う地方創生は綺麗事で、何も協力してくれない」とやり場のない不満を訴えた。

大岩氏の事件発覚後も漁業組合との交渉は大きく進展していないようだ。行政側の窓口として計画を統括する佐世保市企画部政策経営課の武尾定義課長補佐は、「正式な交渉が始まったという情報はない」という。こちらも長期戦の様相を呈している。

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