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〝未稼働の象徴〟宇久島プロジェクトに立ち塞がる壁

最大の壁は資金調達か

とはいえ、農地や海底ケーブルの問題は、計画当初から想定されたはず。ここまで開発が進まない原因は他にあるのかもしれない。

一説では、1500億円の計画であった事業費が大幅に膨らんだと言われている。約7割の土地が営農用になったことなどが要因ではないだろうか。事業の収益性が確保できなくなったのであれば、開発が進められないのも頷ける。

関連性は不明だが、事実、SPCは未だに組成されておらず、オリックスは16年にプロジェクトを脱退した。また、水面下では、PVDP社が売電権利の一部譲渡に向けて、九電工らと交渉中との噂もある。

ただ最大の誤算は、プロジェクトが無制限・無補償の出力抑制案件になったことだろう。プロジェクトは、13年3月までにPVDP社が申請を出した40円案件でありながら、九電からの回答が来た時点では、無制限抑制の対象になってしまったようだ。事業費の調達が困難なのは想像に難くない。

そもそもノンリコースのPFを組成すること自体容易ではないのに、無制限抑制案件となれば、融資のハードルは一気に上がる。事実、無制限抑制案件に対して金融機関がPFを組成した例はほんの一握りだ。しかも、建設予定地の大部分が3年間に限定された一時転用とあっては、融資成立の可能性は極めて低いと思わざるを得ない。

融資を活用しない手もあるが、いかに名だたる大企業が集えども、一プロジェクトに1500億円以上の資金を用意するのは至難であろう。

島の再生という大義名分でスタートした壮大な計画だが、課題は山積している。とはいえ、九電と接続契約を結んだ以上、4月以降もプロジェクトの実現可能性を模索していくことになる。事業者たちには高く険しい壁を乗り越え、ソーラーの新しい可能性を拓いてほしい。島民は今後もプロジェクトの一挙手一投足を見守り、一喜一憂することになりそうだ。

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