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量的制御の時代に突入か⁉

FIT価格決定法に入札方式浮上

国民負担と系統枠が悲鳴をあげ、2030年のエネルギーミックス=22〜24%の達成に黄信号が灯るかもしれない。こうした危機感から入札方式によって、太陽光発電は量的制約をしていく。そんな改革像が見え始めた。シリーズ「徹底検証!FIT大改革」の第2弾は、買取り価格の決定方式と系統制約を追う。

「これまでは買取り価格を決めて、導入量は市場に任せてきたが、再生可能エネルギーの最適なポートフォリオを組むためにも、量を規定し、入札方式によって、買取り価格に競争原理を働かせる」。

買取り価格の決定メカニズムに関する議論が、経産省の有識者会議で本格化した10月末。太陽光は入札方式によって量的制御をすべし、という案で持ちきりとなった。

爆発的な普及で、スタートダッシュに成功した太陽光を尻目に、低調な伸びに終始する他の再エネ。しかし、国民負担と系統枠は限りあるもの。電源間の歪みを是正し、導入バランスをとらなければ、2030年のミックスは失敗し、ひいては自立した電源像の夢も絶たれる。

そこで遡上に載せられたのが、買取り価格の決定方式の見直しだった。だが、なぜもこう太陽光の買取り価格は悪しきものと批判を浴びるのか。簡単に言えば、今の買取り価格の決定方法が、国民負担の総額を低減させるという観点から、算定されるものではないため、だろう。

現行の買取り価格の決定方式について、少しおさらいしたい。

買取り価格は次の2つの基軸から決定されてきた。まず基本的に価格は毎年度決めていく。そして再エネ種別ごとに、さらには規模別などの類型に応じて、原価+適切な利潤を上乗せして、買い取るという仕組みである。

もちろん、現行方式でも効率的な導入を目指してきた。例えば太陽光なら、原価分析の対象は1MW以上とし、さらに平均値ではなく中央値を取る。つまり、トップランナーの原価データをもとに買取り価格を算定し、毎年4〜5円程度のペースで減額してきたわけだ。

しかし、「日本の買取り価格は国際水準と比較して、2倍近くのコストを払って買い取る上、パネル価格なども高止まりしている」と批判が続出。「高い買取り価格は諸刃の剣。FIT制度後、太陽電池の輸入比率は70〜80%まで上がったのに、太陽電池の内外価格差は2倍。プライスは下がらず逆に上がった」。

こんな発言も会議では飛び交った。

さらに国民負担の中には、賦課金の減免制度に対する負担もある。今は賦課金とは別に政府予算(エネルギー特別会計)から手当てするが、将来的には年間1300億円程度の負担額になると試算され、「この金額になれば、エネルギー特会から手当てできない。では、一般会計の中から出せるか。それも無理だろう。そうなると諸外国のように、賦課金に上乗せするしかない」という指摘まで出ることに。

毎年4〜5円程度の減額幅では、もはや国民負担を低減できないのではないか──。

だが、開発期間が優に10年近くかかる他の再エネ電源にすれば、毎年度価格を決定する今の仕組みだと、結局は1年先しか見通せず、買取り価格がいくらになるのかわからないというリスクを開発事業者が背負ってしまう。

そこで「導入実績が乏しい電源特性に応じて、例えば、来年度から3年先までの価格を決める」。

先を先をと、読み通せるよう、2〜5年程度の価格を決定する〝しゃくとり虫〟方式を導入しつつ、大量導入が見込まれた太陽光には、コスト低減を促す価格設定方式を取り入れるべき、だ。

そうして事務局から提案されたのが、Aトップランナー方式(現行の価格決定方法の厳格化)、B価格低減率をあらかじめ決定する方式、C導入量に応じて価格低減率を変動させる方式、D入札方式の4つであった。

ただし、この4つの方式それぞれに一長一短がある(上表参照)。例えばAのトップランナー方式。「今でも適切な価格をつかめず、2倍外しているような状況、A一本でいけるはずがない」。

だが、Bにしても、将来を見通した価格低減率の設定が難しく、Cはさらに複雑で、導入量と低減率2つが当たらなければ、機能しない。

とは言え、Dの市場競争によって価格を決定する入札方式にしても、量と価格のズレを最小化できるが、「小規模発電所やルーフトップは落札できないのでは」「入札に馴染まないものは対象から外すべき」「安かろう悪かろう発電所を助長させる」と議論は紛糾。

土地利用法や都市計画法など本来、遵守すべき法律などによって、スクリーニングをかけ、参加させる仕組みづくり。あるいは規模別、エリア別入札とするのか。そもそも国民負担を削減させる入札とは、単一価格オークションなのか、差別価格オークションなのか。どう市場をデザインしていくのか、議論は多く残る。だが、トップランナーの実績原価を上限価格とし、下限価格も設定するようなA+Dのミックス像が大筋合意を得た模様だ。ただ仮にA+Dでいくにしても、買取り価格の決定時期は、「運転開始時点」ではなく、「FIT認定時点」となる見込みである。

「2030年のミックスによって、量(太陽光・64GW)と価格(買取り費用4兆円)の上限は決定されたようなもの。固定価格を維持したいのであれば、原価プラスαのコスト積み上げ方式は止めるべきだ」とある委員は語った。

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