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回避可能費用、算定改定へ

再エネ新電力に足かせ

経済産業省は、FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取り制度)のルール改定に向け最終調整に入った。ワーキンググループで回避可能費用の算定法を見直し、早ければ今年3月末にも結論を出す。新算定法が適用されれば、再エネの普及に伴う賦課金は抑制されるが、再エネ電源で電力小売に参入する新電力(特定規模電気事業者)の事業機会が損なわれる懸念もある。

回避可能費用とは、国民の負担で再エネを普及させるというFITのルール上生まれた概念だ。再エネ電気を買取った電力会社は、その分は電気をつくらなくて済む。通常発電にかかる燃料費などの支払いを免れるのだから、その費用を回避可能費用とし、これを再エネの買取り額から差し引いた分を賦課金として国民に負担して貰う。つまり、回避可能費用は便宜上つくられたもので、正確に求めることは難しい。

ともあれ、回避可能費用が実態よりも低く算定されてしまうと、賦課金が増える。再エネ普及の国民的コンセンサスが得られなくなる懸念もあるため、より公正に算出されるべきだ。

現在、電力会社の回避可能費用は、各社の電源構成によって異なるが、全電源平均可変費をもとに算定されている。新電力の回避可能費用も電力各社の回避可能費用の加重平均で求められるため、算定法は共通だ。

しかしこの全電源平均可変費を用いた算定法に対して、自然エネルギー財団はこう批判した。

「再エネを受け入れる場合、燃料費の高い電源から停止するはず。回避可能費用は最もコストのかかる石油火力の平均運転単価を用いるべき」、「ドイツと同様に卸電力価格が妥当」、「回避可能費用を石油火力の平均運転単価や卸電力価格を用いて試算すると、賦課金は1100億円から1400億円を節減できる」。

つまり、現行の回避可能費用の算定法は不適切で国民に過重な負担を強いているという指摘だ。では、制度設計時になぜ全電源平均としたのか。経産省の発表資料からはこう読み取れる。

「太陽光や風力は天候によって出力が変動する。一方、電気は貯蔵が利かず需給を一致させなければならない。太陽光や風力の受け入れによる出力変動は、電力会社が様々な電源で調整しており、再エネの受け入れに伴う停止電源の特定は難しい。太陽光は昼間に発電するため、昼間の卸電力価格を採用する案も考慮したが、卸電力取引市場の取引量は小売全体の0.9%に過ぎない。これを算定根拠に用いるのは妥当でない」。

さらに国民負担について、経産省資源エネルギー庁の村上敬亮新エネルギー対策課長はこう述べた。

「再エネの買取りに要した電力会社の自己負担金、すなわち回避可能費用は、現行の電気料金の原価算定ルール上、他社から電力を買取る費用の一部となり、料金原価に計上される。回避可能費用が上がると、賦課金は減るが、その分電気料金は上昇し、結果、国民負担は変わらない」。

それでも経産省は、電力システム改革を見据え、また再エネ導入による既存の発電設備の固定費削減効果についても再検討の余地があると判断し、ワーキンググループを設けて4つの算定案を示した。

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