eye sight

脱炭素電源競売で蓄電池1GW強落札

落札価格は kW2万円台か

初開催の長期脱炭素電源オークションで応札量の4分の1にあたる計1092MWの蓄電池が落札された。同時期に収入を固定化する民間主導のオフテイク契約も成立し、系統用蓄電所の開発が本格化しそうだ。(本誌・楓崇志)

2024年4月26日、電力広域的運営推進機関が容量市場の一部である『長期脱炭素電源オークション』の約定結果を公表した。制度導入後初のオークションだっただけに、注目度は高く、特に系統用蓄電所の事業者に対して20年間の固定費分の収入が約束される仕組みが話題を呼んだ。

というのも、オークションで落札されれば、収益の約9割を還付しなければならないものの、事業者は事業の予見性を確保でき、金融機関から資金を調達しやすくなる。国内で運用実績のない系統用蓄電事業を成立させるうえで有効な制度として期待が大きかった。

実際、応札が殺到した。揚水発電と合わせて1000MW程度が落札上限とされていたのに対し、蓄電池の応札量は4559MWにのぼった。他の電源の落札量が募集容量を下回ったため、結果的に上限を超える1092MWの蓄電池が落札されたが、落札率は24%で、競争率は高かった。

個別案件の落札価格は公表されていないが、落札案件の入札価格はkWあたり2万円台中盤だった模様だ。蓄電池も揚水発電と同様に電力エリアによって異なる調整係数が設定されていたため、蓄電池の上限価格はkWあたり5万5308円から7万4690円と差があったが、いずれにしても競争原理が働いたと言える。

入札に参加したある事業者が「複数案件を3万円台で応札したが、一つも落札できなかった」と話せば、別の事業者は「2万円を切る応札もあったのでは。それで本当に事業化できるのかは疑問だ」と訝しがる。

また、別の事業者は、「調達ルートの最適化で海外製蓄電設備の調達費を抑えること。さらに、将来の増加リスクを加味し、建設費に最大10%を織り込める予備費をどう試算したかが勝負の分かれ目だったのではないか」と指摘する。

eye sight を読む

一覧を見る