買取り価格10%低減
明か暗か!2年目の全量売電
秋まで続く活況
では、2年目の全量売電市場はどう動くのか。当面は活況が続く見通しだ。
経産省は2月初旬、12年度買取り分の〝締め切り〟を発表した。2月22日までに設備認定を申請すれば、12年度の買取り価格が適用されるとし、電力各社もこれに呼応した。系統連系の事前検討などの諸手続きが次年度に延びても、12年度の買取り価格での〝売電権〟を付与する措置である。
これによって2月末まで駆け込み申請が発生した。その規模は明かされていないが、「相当な量」(業界関係者)だった。実際12年12月に設備認定された太陽光発電所の設備量は1.4GWだったが、1月、2月はこれを上回った模様である。
1〜2月分を除いても、12年7〜12月までの設備認定量だけで4.7GWに達している。このうち運転開始した太陽光発電所の設備量は0.8GW。つまり4GW規模の案件が残っており、これに1〜2月の申請分も加われば、5GW以上の建設工事が次年度以降に持ち越される公算が大きい。
「ただでさえ部材や人材が逼迫している。どうやって消化するのだろうか。業界は当分12年度の工事に追われる」(大手EPC)。
こうした状況を見れば、今回の買取り価格によるマーケットへの影響は今秋以降に表れるものと思われる。
メガソーラーを運用するあるIPP(独立系発電)業者は、「IRRが6%を下回ると投資熱は冷え込むだろう。ただ6%を守るためにIPP業者も努力するはずだ。設備費を下げるか、日照量を上げるか。ただ日照条件のよい土地は地代も高い。やはり設置費の10%下げをEPCに要求するだろう」と語る。
ある大手総合商社の担当者は動向をこう予測する。
「モジュールメーカーの利益圧迫は限界に近い。まだ余裕があるのはPCSメーカーや架台メーカー。そして何よりEPC業者だ。現在EPCの利益率は20〜30%もある。いまはひとつのプロジェクトに元受から孫受けまで多くの業者が介在し、それぞれがマージンを取れているが、買取り価格の10%低減によってこの状況も変わるだろう」。
その一方で、送電網への受け入れ問題が影を落としている。全国各地のIPP業者から「受け入れに制限がかかり、希望通りの発電所を建設できなかった」との不満が聞こえてくる。
FIT先進国のドイツは結局この課題を解決できず、累積導入量を52GWとする制限が設けられた。これでドイツのFITは数年後に終了するといわれている。
2年目を迎えた我が国の全量売電市場。その可能性は無限大だ。明か暗か、それを分かつのは政策だけではない。プレイヤーの主体性なのである。