新型コロナ対策 中小支援に80兆円
2020.05.01
PVeye
〝コロナショック〟で経営が悪化した中小企業を政府が支援する。事業規模80兆円の経済対策を講じる方針だ。補助金の拠出や融資制度の創設、税金の減免措置を予定している。(本誌・平沢元嗣)
東京都や大阪府を含む7都府県を対象に〝緊急事態宣言〞を発令した4月7日、政府は補正予算の成立を前提に総額108兆円の緊急経済対策を閣議決定した。その後、国民に一律10万円給付する方針を固め、21日の閣議で総額117兆円の緊急経済対策を決定し直した。このうち、『雇用の維持と事業の継続』のための費用に88・8兆円を割り当て、国民への一律給付金を除いた約80兆円を主に中小企業への支援に活用する。
緊急事態宣言の発令前にも各自治体が外出の自粛を呼びかけてきたが、宣言の発令により、自治体には外出自粛要請の強化を求めた格好だ。加えて16日には宣言の対象を全国に拡大。7都府県に北海道や京都府など6道府県を足した13都道府県を、重点的な感染防止対策が必要な〝特定警戒都道府県〞に指定した。特定警戒都道府県の知事は、外出自粛要請に加え、遊興施設や運動施設に休業を求めることを決め、その他34県の知事も状況を窺いつつ休業要請を出していく方針だ。
消費は急速に冷え込み、企業の業績は悪化した。信用調査会社の東京商工リサーチによれば、4月20日までにコロナショックによる経営破綻は全国で68件にのぼったというが、今後も増えていく可能性が高い。そうしたなか、政府は約80兆円の経済対策を打ち出し、資金繰りに苦しむ中小企業を支援するというわけだ。
ただ、雇用の維持と事業継続の88・8兆円のうち、実際に市場に注ぐ〝真水〞の財政支出は30・8兆円だ。欧米諸国に比べれば遥かに少なく、残りは主に融資による支援である。
太陽光発電所の固定資産税も減免
政府は具体的にどのような策を講じるのか。まず資本金10億円未満の中小企業、フリーランスを含む個人事業者、医療法人や農業法人、NPOといった会社以外の法人まで対象とした給付金を用意する。2020年1月から12月までのうち、19年の同月と比べて売上高が50%以上減少した月を申請者が選び、それに12を乗じて、19年1年間の総売上高から引いた金額を給付する。ただし、給付の上限は、法人は200万円、個人事業者は100万円だ。
金額は少ないにしても、利用しない手はない。申請に際しては、19年の確定申告書類の控えと減収月の事業収入額を示した帳簿等を提出する。補正予算の成立後1週間程度で申請受けつけが始まる。電子申請の場合、申請後2週間程度で給付が完了する予定だ。
政府は投資に対する支援も行い、既存の補助金制度を手厚くする。ものづくり補助金とIT導入補助金の補助率を、いずれも2分の1から3分の2へ、持続化補助金の補助上限を50万円から100万円にそれぞれ引き上げる。
太陽光発電関連企業向けでは、サプライチェーンが毀損したために国内に生産拠点を移す企業に対し、オンサイトのPPA(電力購入契約)モデルを活用した自家消費用太陽光発電設備の導入を支援すべく、50億円の補助金を拠出する見通しだ。オンサイトPPAモデルで太陽光発電設備や蓄電設備を設置する民間企業に対し、太陽光発電設備にはkWあたり4〜6万円、蓄電設備にはkWhあたり2万円またはkWあたり3万円、設置費用を補助する。
このほか、日本政策金融公庫などの過去の借入れを一部実質無利子で借換する制度や、解雇を伴わないことを条件に従業員の賃金などを、中小企業は90%、大企業の場合75%助成する制度も設ける。
固定資産税や都市計画税の減免措置も実施していく。業種を問わず20年2月から10月までの任意の3ヵ月の売上高が前年同期比30%以上減少した場合、両税の納付額を半分にし、50%以上減少した場合は全額免除する。太陽光発電所も減免措置の対象に含める。
さらに、20年2月から納期限までの間のいずれかの1ヵ月で、売上高が前年同月比20%以上減少した場合、法人税、消費税、申告所得税、固定資産税の納税を、いずれも担保不要で1年間猶予する方針だ。
また、欠損金の繰戻還付の対象も拡充する。これは、前年度黒字で法人税を規定どおりに収めた企業が赤字に陥った場合、前年度に納めた法人税の一部を受け取れる制度で、従来資本金1億円以下の中小企業を対象にしていたが、10億円未満の企業にまで対象を拡げた。
融資は慎重に
コロナショックで観光業を中心に企業は甚大な被害を受けたが、太陽光関連企業にも影響が及んでいる。
住宅向けに全国で太陽光発電設備を訪問販売するある企業の経営者は、「3月の中頃に東京都で、4月中旬からは全国で営業を停止した。2ヵ月間は訪問販売営業を自粛するつもりだ」とし、「その間の収益はなくなってしまう。1.5億円から2億円の減収は覚悟しないといけない」と打ち明ける。
当面の運転資金に苦慮する事態が起きそうなら、融資を活用するのも選択肢のひとつだ。創設された融資は政策公庫など政府系金融機関による融資と、民間金融機関による信用保証つき融資に分かれる。それぞれ職種と売上高の減少率によって利用できるかが決まる。
政策公庫の融資のなかでは、『新型コロナウイルス感染症特別貸付』が活用しやすいだろう。対象は、最近1ヵ月の売上高が前年または前々年同期比で5%以上減少した中小企業やフリーランス含む個人事業者だ。中小企業は最大3億円、個人事業者は6000万円まで借りられる。
信用保証も直近1ヵ月の売上高の減少率に応じて利用可能だ。売上高の減少率が15%以上で『危機関連保証』を、20%以上で『セーフティネット4号』を活用できる。前者は一般保証枠2.8億円と別枠で2.8億円を上限に借入債務を100%保証する。後者は、一般とセーフティネット保証とはさらに別枠で2.8億円を上限に保証するというものだ。指定の業種であれば、売上高の減少率が5%以上で借入債務の80%を信用保証協会の保証するセーフティネット5号が使える。一般電気工事業など、4月14日現在対象は738業種ある。
淀屋橋総合会計の安田祐一郎代表は「融資が受けられるかの基準は売上高が下がったかどうか。20年と19年の売上高の試算表を提出すればよい。迅速に審査してくれるようだ」と話す。
日本の某太陽光架台メーカーの社長は、すでに特別貸付による融資を申請したという。「1ヵ月半の間、中国で製造している製品の出荷ができず、売上高がゼロになったので、融資の活用を決めた」と明かす。
ともあれ、融資である以上、当然ながら返済の義務を負う。無利子であっても、毎月の返済が後に負担となる可能性もある。それだけに、経営コンサルティングを手掛けるトゥ・ソリューションの大内利之代表は、「運転資金を借りても、この事態がいつ収まるのか分からない。借金だけが残るかもしれないという不安が経営者にはある」と指摘する。実際、ある太陽光発電の販売・施工会社の社長は、「できれば頼りたくない」と率直な思いを吐露する。
4月19日現在、日本では感染者が1万人を超え、150人以上が命を落とした。いまだ収束の気配は見えないが、明けない夜はない。
緊急経済対策の内容が正式に決まるのは補正予算の成立後だ。大型連休後の見込みである。
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