FIT法改正案成立 2022年4月施行へ
2020.07.01
PVeye
FIT法の改正を盛り込んだ『エネルギー供給強靭化法』が2020年6月5日に成立した。施行期日の22年4月1日に向け、詳細な制度設計が本格化する。(本誌・楓崇志)
今国会に提出されたFIT法と電気事業法、JOGMEC法の改正案からなる『強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案』(エネルギー供給強靭化法)。コロナ禍の影響で審議の遅れが懸念されていたが、5月26日に衆議院本会議で、6月5日に参議院本会議でそれぞれ可決され、原案のまま成立した。
審議の場となった両院の経済産業委員会では、参考人質疑も行われた。衆議院では、地球環境産業技術研究機構の山地憲治氏、日本経済団体連合会の小野透氏、社会保障経済研究所の石川和男氏、気候ネットワークの桃井貴子氏が、参議院では、東京大学公共政策大学院の大橋弘氏、ジャーナリスト・環境カウンセラーの崎田裕子氏、横浜国立大学大学院工学研究院の大山力氏が参考人として出席した。
今回成立したFIT法の改正では、法律名を『再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法』に改めた。政府は、市場価格に一定のプレミアムを上乗せするFIP(フィード・イン・プレミアム制度)や、地域間連系線などの系統増強費用の一部を賦課金方式で全国負担する新制度を創設するほか、事業用太陽光発電所の事業者に対し、設備の解体や廃棄などに係る費用の外部積立てを原則義務づける。
再エネ関連法に詳しいベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士は、「法案成立を受け、22年4月1日の施行に向けた政省令や施行規則の策定が始まる」としたうえで、 「いくつか注視すべき論点がある」と指摘する。
たとえば、失効期限の設定だ。事業用太陽光発電には現在、認定取得から原則3年の運転開始期限が設けられているが、期限を超過しても売電期間が短縮されるのみで、売電単価は維持され、認定は失効されない。それだけに期限超過を前提に開発している案件もある。だが今回の改正で、認定失効の条文であるFIT法第十四条に、『…経済産業省令で定める期間内に認定計画に係る再生可能エネルギー発電事業を開始しなかったとき』という内容が加わった。つまり、失効期限の設定次第で稼働目前に認定が失効してしまう案件が出てくるかもしれないのだ。
江口弁護士は、「施行期日である22年4月以降、たとえば25年に稼働を予定している未稼働案件もある。稼働する可能性の高い案件には一定の配慮が必要ではないか」と話す。
また、事業用太陽光発電の事業者は、売電期間の終了前10年間に源泉徴収方式で廃棄等費用を外部で積立てていくことになるが、一部の事業者には内部積立てが認められる。江口弁護士は、「原則は現金での積立てのようだが、現金では非効率になりやすい。銀行保証なども認めた方がよいのではないか」と提案する。
さらに、FIPの詳細も重要な論点だ。「うまく制度設計しなければ、資金調達に支障をきたす可能性がある。急激な市場変動があっても、きめ細かく見直せるような仕組みが望ましい」(江口弁護士)。
今回成立したエネルギー供給強靭化法では、分散型電源を束ねるアグリゲータが電事法上に位置づけられた。FIPの制度設計とともに将来につながる重要な改正である。主力電源を目指す再エネの普及拡大を妨げない丁寧な制度設計が求められる。
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