20年の〝高耐久〟架台開発 奥地建産の飽くなき挑戦
kW単価からkWh発電量へ──。FIT(再生可能エネルギーの全量買取り式固定価格買取り制度)の始動を契機に、太陽光発電の価値基準が大きく変化した。発電事業の本格化に伴い、太陽光発電のユーザーが発電能力を表す出力よりも、実際の発電量を重視し、長期間発電し続けるかどうか、その確実性を求めるようになった。この状況下、太陽電池モジュールを支える架台の耐久性向上に取り組むメーカーが存在感を高めている。大阪に本拠を構える奥地建産だ。同社の設計思想と技術力に迫った。
住宅建材で培われた技術 住宅用架台で業界トップ
我が国ではいま、太陽光発電所の建設計画が急増している。今年7月にFITがスタートし、出力10kW以上の太陽光発電は、20年間の長期にわたって、kWhあたり42円で売電できるようになった。太陽光発電所に投資すれば一定の利益が得られるため、数多の企業・団体、あるいは個人投資家まで、こぞって発電所の建設に乗り出している。
しかし、20年という歳月は想像以上に長い。この間、支障なく稼動し続ける太陽光発電所を建設するのは容易ではないだろう。にもかかわらず、新興のモジュールメーカーまでが20年保証を謳う。果たして、本当に問題はないのか。
太陽光発電所への投資を目論むユーザーが、疑念を抱くのも無理はない。ここに来て、モジュールの出力が低下したという事例が相次いだ。台風の影響で、モジュールが吹き飛ばされたケースも少なくない。こうした実情を踏まえ、奥地誠社長は方針を語る。
「FITの下で太陽光発電の普及拡大を図るということは、制度の仕組み上、太陽光発電所は国民の負担で建設されていくことになる。つまり、太陽光発電は社会的資産なのです。ならば、事業者には、長期間安定して稼動する太陽光発電所を建設する責任がある。少なくとも我々は、20年間モジュールを支え続ける架台を供給していきます」。
この品質重視に徹した同社の設計思想は、半世紀以上に及ぶ社歴によって培われたといえる。奥地建産の創業は1955年。64年に法人化した後、住宅用鋼製資材や住宅基礎溶接鉄筋を製造してきた。
販売先は、主にプレハブ住宅や一般住宅を建設するハウスメーカーである。長期耐久性が問われる住宅分野での事業展開であっただけに、同社は耐久性に優れた資材の開発に傾注しなければならず、自ずと技術やノウハウは蓄積されていった。やがて、地盤調査も独自に手掛け、軟弱地盤への対応や、土中での鋼材の耐腐食性という領域まで知見を広げる。
こうした経験を経て、長期耐久性の向上に関する技術的水準を高め、家電製品を扱うメーカーとは一線を画する設計基準を確立する。そして2002年、大手太陽電池メーカーからの要請をきっかけに、太陽光発電用の架台の製造に参入したのである。
架台の原材料となる鋼材は、新日鐵住金と日新製鋼から調達し、三重県伊賀市の自社工場で加工。02年9月より住宅用太陽光発電システムの専用架台の出荷を始める。
以後、架台の販売を順調に伸ばし、10年度は月間3000棟ペースで推移。11年度は同3500棟で、今年度は4500棟、出力換算で月間18MWに到達する。架台の出荷実績は累計20万棟にのぼり、業界トップクラスの生産シェアを保有するに至った。