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パネルリサイクル義務化へ 〝前払い〟で費用の担保を

杉山・栗原環境事務所 杉山涼子 環境・廃棄物コンサルタント

環境省が太陽光パネルのリサイクル義務化を検討している。制度設計に向けて考慮すべき点は何か。廃棄物問題に詳しい杉山涼子氏が語った。

プロフィール●すぎやま・りょうこ 1955年岐阜県生まれ。78年大阪大学工学部環境工学科卒業、81年インディアナ大学大学院修士課程終了。96年に杉山・栗原環境事務所を設立し、代表取締役に就任。2007年より取締役。15年筑波大学大学院博士後期課程修了、経営学博士。各省庁の委員会で委員を歴任したほか、東京都廃棄物審議会委員、岐阜女子大学特任教授を務める。

太陽光パネルのリサイクルにおける最大の課題は費用負担だ。パネルに限らず、一般的に廃棄物処理費用のなかで収集費の占める割合は大きい。家庭ゴミの処理費のうち6割が収集にかかる費用との例もある。収集に必要な費用がきちんと担保されなければ、リサイクルの仕組みが正常に回らず、維持は困難になる。

家電製品を例に取ると、家電リサイクル法の規定で、テレビと冷蔵庫、エアコン、洗濯機を廃棄する場合には家電販売店が引き取ってリサイクル業者へ渡す制度になっている。製品の持ち主も「リサイクル券」を購入して数千円を支払うため、小売り事業者と消費者に費用負担が課せられる。メーカー負担の考え方もあるが、基本的には製品を利用し、便益を享受してきた人が支払う考え方がよいと思う。

ただ、この仕組みではリサイクルにかかる費用の回収が〝後払い〟の形となる。そこで支払いを嫌がる人が不法投棄をしたり、非正規の不用品回収業者へ製品を流したりといった状況が起こっている。理想をいえば、自動車のように、設備を購入する段階でメーカーが価格に上乗せする〝前払い〟が望ましい。

むろん、メーカーが資金を保管していると、倒産や流用の危険性がある。政府や業界などの公的機関による基金を創設することや、企業が管理するにしても、保険のような仕組みを設定することが考えられる。10年、20年後のことは全く分からないので、複数の安全策を重ねておく必要はある。

FITで5%の廃棄費用を積み立てることが義務づけられていると聞いているが、既存の太陽光発電設備では、事業者が積立てを怠っている場合も多いだろう。その場合、売電期間の途中からでも積立てを始めさせる手立ては必要となる。そうして費用を強制的に徴収したうえで、太陽光パネルを正規のリサイクル業者経由で排出する際に一定額の金銭を還元するようにすれば、リサイクルに協力するインセンティブは働くはずだ。それは制度設計で対応できる部分となる。

ともあれ、この問題は特定の誰かが全責任を負えば済むことではなく、生産から最終的なリサイクルまで一つの輪になっている。リサイクルしやすい製品は設計段階から考える必要があるほか、製品に使用されている部材の成分を最も把握しているのは当然製造元である。メーカーなど川上の事業者がリサイクルに協力することも期待したい。

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