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PVeye 2023年5月号
特集「大解剖! FIPビジネス」
FIP(フィード・イン・プレミアム制度)を活用した再生可能エネルギー発電所の開発は、相変わらず低調だ。FIPの導入から1年が経過した今も、収入の予見性が低いとの見方が先行しており、金融機関が融資に消極的なのである。発電事業者は、補助金利用の再エネ発電所開発を選択しがちで、このままではFIPが形骸化しかねない。
しかし、国はFIP案件に併設する蓄電池に補助金を給付するなど、FIPの推進と蓄電池の普及を促す。これにはFIT賦課金を抑える狙いもあるが、もはやFIPと蓄電池なくして電力の安定供給も2050年までの脱炭素化も実現しないと見ているのだろう。
事実、FITで再エネが普及したものの、日中しか発電しない太陽光発電の電力が系統に入り、電力の需給調整に支障が生じた。九州電力管内ではそれが顕著で、再エネの出力を抑制しつつ夕方以降は火力発電で供給を補う運用が常態化している。それだけに、燃料費が高騰すると、卸電力取引の1日の価格差が100円を超える異常事態が発生した。しかも、これでは脱炭素化は進まないだろう。電力の安定供給上、再エネの普及には限界があるからだ。
解決の糸口があるとすれば、電力需要に応じて発電事業者が再エネ電力を供給する電力市場の構築だ。そのためには、出力が不安定な再エネ発電所には蓄電池を併設しなければならない。
仮にも70GWに及ぶFIT太陽光発電所が全てFIPに切り替わり、蓄電設備が併設されれば、再エネの出力抑制問題は解消するはずだ。そして電力価格は正常化に向かい、火力発電への依存度は減って、脱炭素社会の実現も見えてくる。
ともあれ、一部の発電事業者はFIPの活用に着手した。電力小売り会社やEPC(設計・調達・建設)会社のなかにはFIP事業モデルの構築に動く企業もある。そこで本誌は、FIPの仕組みを改めて解説し、FIPの事業モデルを3つ挙げて商機を探っていく。(本誌・岡田浩一、楓崇志)
徹底考察!
FIP事業収入の仕組み
FIPの事業収入は、電力の市場価格と連動するため予見性は低くなるが、長期的にはFITの事業収入と同等とされている。市場価格の変動パターンを複数挙げ、FIPの収入構造を考察する。
プレミアムで収益補填
王道のFIP×相対取引
最も多いFIP活用案件は、相対契約との併用だ。プレミアム収入の帰属に違いはあるが、売電収入が長期固定化されるため、発電事業者にとって事業化がしやすい。
森・濱田松本法律事務所野間裕亘弁護士「PPA交渉が最重要アグリゲータの拡がりにも期待」
FIPが始まって1年が経過したが、利用が拡がっていない。何が課題なのか。プロジェクトファイナンス組成の経験が豊富で再エネに詳しい野間裕亘弁護士に聞く。
東京ガス、発電所併設の蓄電池実証へ
FIP活用で市場取引
東京ガスは蓄電池の最適制御技術の確立に向け、大和エネルギーと共同で実証事業に着手する。発電事業者への支援を強化し、新たな事業モデルを構築していく。
利用広がるか
FIP×コーポレートPPAの潜在力
電力消費者が起点となる再エネ調達法のコーポレートPPAも、FIPとの併用が可能だ。まだそれほど拡がっていないが、利用拡大の余地はありそうだ。
蓄電池併設で開花なるか
意義深いFIP×市場取引
FIP活用の市場取引は、売電単価を固定化できす、事業化は難しいが、蓄電池併設となれば訳が違う。
電力の安定供給や脱炭素化の観点に立てば、その意義は大きい。
あいおいニッセイ、インバランス保険を開発
損害保険大手のあいおいニッセイ同和損害保険(東京都渋谷区、新納啓介社長)は2023年4月、FIP(フィード・イン・プレミアム制度)や〝非FIT〟発電事業者向けのインバランス保険を開発したと発表した。6月にも提供を始める。
PR企画
機器の知見を広めよう!
自家消費提案の基礎固め
自家消費用太陽光発電設備の提案力が問われている。客先の電力使用状況や屋根の種類など条件が現場によって異なるうえ、蓄電設備や太陽光パネル搭載カーポートなどの機器が増え、設計が複雑になってきた。まずは機器の知見を広めよう。
低圧太陽光の規制強化
使用前自己確認が必須に
2023年3月20日から低圧太陽光発電設備の保安規制が強化され、使用前自己確認や基礎情報の届け出が義務付けられた。自家消費用を含む全ての設備が対象となるため、要注意だ。(本誌・楓崇志)
長州産業、太陽光パネル工場3倍に増強
年産500MW体制構築
太陽光パネル製造の長州産業はこのほど、パネルの年産能力を従来の3倍にあたる500MWへ拡張した。住宅用太陽光発電市場の需要拡大を見据え、住宅用太陽光パネルとして販売していく方針だ。(本誌・川副暁優)
「不良品割合はゼロが基本」
長州産業 岡本晋社長
コロナ禍で太陽光パネルの需要が停滞し、販売が振わなかった時期もあったが、需要はほどなくして回復した。それよりも問題は2021年10月頃から始まったロックダウンだった。
住宅用太陽光パネルの撤去・回収を整備
東京都がマニュアルを公開
東京都は2023年5月、住宅用太陽光パネルの撤去や収集運搬に関する事業者向けマニュアルを作成する。適正な廃棄処理を促し、廃棄パネルを再資源化する体制を整えていく構えである。(本誌・土屋賢太)
Vol.84
小田原カナゴテファーム
矢作の里ソーラ-シェアリング
小田原かなごてファームがFITを活用しない〟非FIT〟で開発した営農用太陽光発電所。発電した再生可能エネルギー電力は、グリーンピープルズパワーを介して小田原かなごてファームが運営するカフェに供給し、カフェの使用電力を全量再エネで賄う“RE100〟を実現した。
伊藤正裕パワーエックス取締役兼代表執行役社長CEO
「再エネと蓄電技術でエネルギーカンパニーを目指す」
電気運搬船で再エネを海上輸送する壮大なビジョンを掲げれば、EV充電ステーションの開発や蓄電設備の生産では緻密な戦略を立てる。パワーエックスを率いる伊藤社長の狙いとは。
ジンコソーラー
n型パネルで世界を席巻蓄電設備でもトップ目指す
世界で最も多く太陽光パネルを供給してきた中・ジンコソーラー。先んじてn型単結晶パネルの量産に舵を切り、このほど蓄電設備の開発まで始めた。挑戦を厭わない同社の足跡を辿る。
「蓄電所開発を本格化 大型蓄電設備を商品化する」
ジーシーエル・ソーラー・ジャパン 李琦 CEO
太陽電池材料大手の中・GCLグループの日本法人であるジーシーエル・ソーラー・ジャパンはこのほど蓄電所の開発に乗り出した。太陽光パネル販売事業とともに力を注ぐ方針だ。
「蓄電池セルから内製化 蓄電設備を拡販していく」
トリナ・ソーラー・ジャパン 李娜 統括副社長
太陽光パネル世界大手の一角、トリナ・ソーラーは日本向けのパネル販売が好調のようだ。日本法人の統括副社長を務める李娜氏に話を聞いた。
グリーンシステムコーポレーション 営農用太陽光3.3MW運営
大東建託、京セラとPPA締結へ
ZEH賃貸住宅の再エネを販売
中・レノン 中型蓄電設備を日本で初納入
川崎重工、事業所間の自己託送実証を実施
再エネ活用を視野に
サンフロンティア不動産、営農用太陽光開発でノータスと資本提携
ヒロエナジー 太陽光発電所開発で東北へ展開
正和工業、太陽光カーポート発売
蓄電池、V2X一体型
出光興産、再エネ電力分別供給システム開発
種子島で実証開始
イーエスエヌ 自家消費太陽光の受注拡大
ディーユーネット 住宅用太陽光パネルの点検・洗浄開始
ファイバーゲート、集合住宅向け蓄電設備開発
23年内に実用へ
東亜道、路面太陽光の耐久性を実証
大型車20万輪相当
[第46回]
蓄電ビジネスの可能性⑦
失敗しない4つの要点
蓄電ビジネスの可能性は今回で最終回となる。アンプレナジーの村谷社長が系統用蓄電事業を実施するうえで4つの要点をまとめた。事業者が最小の負担で実行できる方策である。
ケイジェイシー
営農用太陽光架台発売
九電テクノシステムズ
電動バス向け高出力V2X発売
リープトンエナジー
n型単結晶パネル今夏発売へ 両面発電タイプも用意
三協立山三協アルミ社
カーポート発売 様々な太陽光パネルに対応
[恵那市]
岐阜県恵那市は、『ゼロカーボンシティ』を表明するとすぐに再エネの導入を促す「促進区域」を決めた。屋根上の太陽光発電を軸に脱炭素化を進める市の動きに迫った。
世界市況データ(ポリシリコン、ウエハ、セル、モジュールスポット価格)/主要企業のセル・モジュール生産能力/日本卸電力取引所におけるスポット市場の平均取引価格推移/東証インフラファンド市場における上場銘柄の株価推移/世界太陽光関連企業 決算データ
第32回
マスタープラン
OCCTOが2023年3月、長期に亘る電力系統の増強計画として『マスタープラン』を策定した。概要をまとめる。
発刊日 | 2023年04月25日 |
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定価 | 1,980円 |
コード | 491080109043701800 |