九州北部豪雨で メガソーラー一部損壊
2017.08.02
PVeye
7月5日から6日にかけて降り続いた大豪雨で、九州北部は各地で深刻な事態に見舞われ、太陽光発電所にも被害が及んだ。現地の状況を追った。(PVeye記者・中馬成美)
「こげんなったとは、初めてやけん。今回ばっかしはもうダメやね」。
福岡県朝倉市杷木林田地区の赤谷川近くで建築板金業を営む大内田博さん(68)は、自宅の壁2m程の高さにこびりついた土砂をながめながら肩を落とす。
赤谷川は、福岡県を流れる筑後川水系の支流だ。7月5日の午後から水かさが急激に増し氾濫、周辺一帯は洪水に見舞われた。浄水場が流されため、杷木林田地区は断水が続いている。「営業は無理やね、水がないけん、洗おうにも洗えんとよ」と大内田さん。表情は晴れないが、しっかりとした足どりで作業場の片づけに戻っていった。
記者が現地を訪れたのは7月13日。記録的豪雨とは対照的に、太陽が照りつけ、汗が滴る真夏日だった。朝倉市杷木地区では、山積みになった土砂の間を自衛隊車両が行き交い、道路脇で住民が撤去作業に勤しんでいる。馴染みある九州の変わり果てた光景に、胸が締めつけらる思いがした。
生々しい爪痕が残っていたのは、朝倉郡東峰村宝珠地区にある特別養護老人ホーム宝珠の郷だ。ここは一時160人が孤立した緊急避難所。すぐ近くの山で土砂崩れが発生し、道路が塞がれてしまったのだ。宝珠の郷で生活相談員を務める森山茂生さんは、5日夜の様子をこう説明する。
「夜10時頃、どどどどっと、ものすごい音。最初は雷かなと思ったけど、車のハザードランプの光で土砂崩れだと分かりました。朝見ると、フェンスの向こうの林がない。愕然としました」。
避難所には6日朝に自衛隊が到着し、支援活動を実施。孤立状態は解消された。幸い人的被害はなかったものの、13日時点でも断水が続いていた。
東峰村には、EPC(設計・調達・建設)国内大手ウエストホールディングスが所有する1.9MWのメガソーラーがある。付近では道路が一時通行止めになり、孤立した人が自衛隊員に救助されたという。それだけに、メガソーラーにも甚大な被害が及んでいるのではないかと想像したが、意外にも被害は大きくなかった。メガソーラーの門扉には流木などが散乱し、一部地盤が崩落してパネルが流されていたが、大きな損壊は見られなかった。ただ、停電のため、「現在(7月14日)も発電は停止した状態だ」(ウエストO&M幹部)。
大分自動車道の朝倉インターと杷木インター間にある山田サービスエリア下り線にも1MWの太陽光発電所がある。途中車を止めると、法面の一部がブルーシートで被われていた。発電所を所有する西日本高速道路によると、「発電所そのものには損壊はなく、法面で一部土砂が流出したので養生している」という。
一方、東峰村で太陽光発電設備を販売する岩下芳行さん(61)は奇跡的な話をしてくれた。岩下さんは、27.8㎾の太陽光発電所を所有し、4㎾のPCS(パワーコンディショナ)を建屋内に7台設置していたが、近くの用水路が氾濫し、建屋に土砂が流れ込んだ。これによって、3台のPCSは浸水してしまったのであるが、「ブレーカーを落として5日後、安全確認してから、スイッチ入れたら、良うなっちょった」(岩下さん)。
東峰村の川沿いに住居を構える伊藤和幸さん(68)は、母屋に12㎾、車庫に14㎾の太陽光発電設備を設置していたが、車庫の設備はPCSが水に浸かり、14㎾分が使用できなくなってしまった。しかも、伊藤さんは、農業を営み、胡椒やイチジクを栽培していたが、その畑も被害に遭い、農機具まで使えなくなってしまった。
それでも、「いっそ農業やめた方がよか気もすっばってん、農地は荒れるしね。軽トラもダメになったけど、何とかせんば」と言いながら、伊藤さんは、はにかんだような笑顔を見せた。
被害は深刻だが、被災地で出会った人は気丈で前を向いていた。人間の強さを垣間見た。
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