大型台風が西日本を直撃 太陽光発電所が多数損壊

2018.10.01

PVeye

 9月4日に猛烈な台風21号が襲来し、西日本を中心に被害が拡大、太陽光発電設備の損壊事故が多発した。(PVeye記者・平沢元嗣)

 台風21号は8月28日の発生から急速に勢力を増し、9月4日正午頃、徳島県に上陸。淡路島を通過して兵庫県に再上陸し、近畿地方を北上した。近畿・四国地方では記録的な高潮が発生し、気象庁によると、大阪や神戸など6地点で過去最高の潮位を超えたという。
 大阪府泉南郡田尻町では、4日午後1時38分に観測史上最も強い最大瞬間風速58.1m/秒を記録した。2591tのタンカーが強風で流され、町内の関西国際空港とりんくうタウンを結ぶ連絡橋に衝突、陸路が閉ざされ、観光客ら7800人が一時関空に取り残された。
 総務省は、9月14日午後6時の段階で、台風21号による死者が13人、重軽傷者が895人にのぼったと発表。全壊した家屋は9軒、半壊・一部損壊は合わせて2万1900軒に達した。
 太陽光発電所の損壊事故も多発した。大阪府堺市内の関西電力が保有する出力10MWの太陽光発電所では、太陽光パネル約30枚が飛来物によって損傷し、接続箱6台に水が浸入。大阪市住之江区南港では、三興倉庫の本社の屋上に設置されていた出力2MWの太陽光パネルが吹き飛んだほか、複数の屋根上太陽光発電所が被害に遭った。
 大阪府南河内郡河南町の今堂池に浮かぶEPC(設計・調達・建設)大手ウエストホールディングスの水上太陽光発電所では、一部のフロートが風で飛散。兵庫県の淡路島では沿岸部の地盤が崩れて太陽光発電設備が崩壊し、無残な姿に変わり果てた。

設計基準を満たしても…

 不適切な設計が原因で損壊した太陽光発電所は少なくないだろうが、今回は設計基準を満たしていた発電所も数多く被害を受けている。つまり、架台の設計用荷重の算出方法を示した『JISC8955』が、設計用基準風速として規定する以上の強風が吹き荒れたわけだ。事実、大阪府泉南郡田尻町におけるJISの設計用基準風速は34m/秒だが、町内の関空では最大風速46.5m/秒を観測した。
 ならば、設計基準を見直すべきなのか。すでにJISは2017年3月に改正され、設計者にはより高い強度の設計が要求されるようになったが、これをさらに引き上げる必要があるのか。
 むろん、いかなる強風が吹き荒れようと倒壊しない設備は理想だが、建設費は嵩み、太陽光発電の経済メリットは薄れてしまう。この辺りは、今後議論の余地はあるが、現状はJISに基づいて太陽光発電所を建設し、事前に台風被害が想定される場合は、進路や速度を確認しつつ、台風が通過した後は迅速に現場へ向かうべきだろう。
 ウエストHDの事業会社、ウエストビギンの中村公俊取締役は、「大切なのは、事故後一刻も早く現場に駆けつけ、発電事業者や周辺住民に安心してもらうこと」とし、「電気とハードウェアの両面から太陽光発電設備のO&M(管理・保守)を実施できる体制を整える必要がある」と強調する。
 ウエストHDが建設を手掛けた太陽光発電所のうち、台風21号で20基弱の設備の一部が損壊した模様だが、同社は9月12日頃までに応急措置を済ませ、9月末までには全現場で今後の復旧計画を固める方向だ。
 堺市のメガソーラーも、運営する関電は台風が去った翌日のうちに損傷した箇所を切り離して発電を再開したという。

停電時こそ本領発揮

 今回の大型台風は各地で停電の被害をもたらした。関電によれば、4日午後9時の時点で170万戸が停電し、京都府や和歌山県の一部では、復旧に10日以上を要したところもある。実際、11日に和歌山県有田郡有田川町東大谷地区を訪れると、4日正午に停電が発生して以来、1週間経っても復旧していなかった。
 同地区に1人で暮らす澤田伊都子さん(79)は、「これほど長い停電は、1953年の紀州大水害の時以来だ。電気が使えないと、とても不便」とため息をつく。
 同地区に住む大硲金一さん(77)は、「木が倒れて電線を切断し、停電が発生しているようだ。この辺りはお店がないから、通常は1回の買い物で1週間分の食料を購入するが、停電で冷凍庫が使えない。今は2日に1回買い物に行かなければならない。妻には持病があり、私も目が悪く、運転は大変だ」と嘆く。周辺には空き家が多く、住民同士の助け合いも難しいようだ。
 その一方で、住宅用太陽光発電設備が活躍していた。同地区の前北敏夫さん(69)は、1年前に自宅と倉庫の屋根に計10kW の太陽光パネルを設置しており、自立運転機能への切り替えを済ませると、「久しぶりに電気が使えてうれしい」と喜ぶ。
 ただ、前北さんが自立運転機能に切り替えたのは停電発生から1週間後だった。設置時に販売会社から説明を受けていたものの、「蓄電池がないから太陽光発電は使えないと勘違いしていた」(前北さん)。販売会社はすでに倒産しており、連絡がなく、自身の勘違いにしばらく気がつかなかったのだ。
 住宅用太陽光発電は停電時に役立つが、自立運転の仕方を忘れている所有者が多い。災害の際は、販売・施工会社が責任をもって対応するべきだろう。

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