経産省、出力抑制対象拡大へ500kW未満の旧ルール事業者への適用を検討

2019.05.30

PVeye

 経済産業省は4月26日、系統ワーキンググループを開催し、出力抑制の対象を拡大する方向性を明らかにした。今春に入り出力抑制回数が急増していることなどを受けた対応だ。(PVeye記者・楓崇志)

 昨秋よりついに始まった九州本土での出力抑制。出力制御量の低減に向け、九電も関門連系線のさらなる活用やオンライン制御への切り替え推奨などを実施しているようだが、今春に入り、太陽光発電所に対する出力抑制の指示日数が急増している。
 昼間の電力需要が少なくなる軽負荷期であるため、もともと出力抑制の実施が予想されていたものの、ここまで3月に16回、4月には20回も実施された。5月に入っても、改元に伴う10連休真っ只中の2日から8日まで1週間連続で出力抑制が行われた。
 現時点で出力抑制対象となるのは、無制限・無補償での出力抑制の受け入れを接続条件とする『指定ルール』事業者と、年間30日または360時間を上限に無補償での出力抑制を受ける『旧ルール』事業者。後者については、当面は500kW以上の発電所を対象としてきたが、ここに来て、出力抑制の対象外だった10kW以上500kW未満に対象範囲を拡大する方針が示された。
 経産省新エネルギー課の担当者は「当面は対象外としていたが、現状の対象だけでは系統運用に支障をきたす恐れがあるため、今回(対象拡大の)必要性を示した」と強調。「これから対象エリアや法律との整合性を含め、議論を進めていく」とした。500kW未満の太陽光が出力抑制対象となったのは、2015年1月のFIT法施行規則の改正後。一定の条件のもと、無補償での出力抑制への同意は電力会社の接続拒否事由の一つだったが、この改正で出力500kW以上に限るとしていた文言が削除された。
 ベーカー&マッケンジー法律事務所の江口直明弁護士によると、「(15年1月の改正施行規則の)施行日後に特定契約を締結した500kW未満の太陽光の一部については、特定契約に基づく360時間ルールまたは指定ルールにおいて出力抑制の対象に含められた」。
 その一方、15年1月の改正前に特定契約を締結し、出力抑制に関する条項が含まれていない500kW未満の太陽光については、「発電事業者は無補償の出力抑制に応じる契約上の義務は存在しない」とも指摘する。
 「これらの発電設備も出力抑制の対象とするならば、出力抑制に合意してもらうための枠組みや根拠づけが必要。契約内容を電力会社の一存で変更できるという条項があれば、公平な出力制御のために不可欠な措置として、電力会社が条項を追加することも考えられるが、発電事業者が明示的に出力抑制を拒否すれば、強硬にはできないだろう。いずれにしても発電事業者やレンダーなど利害関係者に十分なヒアリングを行い、当事者が納得する形で議論を進めていくことが重要だ」(江口弁護士)。

丁寧な対応必要

 ともあれ、出力抑制の対象事業者が増えることで、これから稼働する新規事業者を含む1発電所あたりの抑制量は減る。個々ではなく、全体最適としては望ましいといえよう。ただ、旧ルール事業者は基本的に手動制御であるため、出力抑制の指示があるたびに発電所に出向き、PCS(パワーコンディショナ)を操作しなければならない。
 国はこれら旧ルール事業者に対し、当日の需給予測に応じた柔軟な調整が可能で抑制量の削減にもつながることなどから、遠隔でPCSのオンオフ操作ができるオンライン制御の導入を推奨している。現在対象である500kW以上の旧ルール事業者で実際に採用するケースも増えつつあるようだ。
 とはいえ、遠隔制御装置の導入には追加費用が発生する。特に九電エリアでは、今回拡大する方向で検討されている旧ルール事業者のうち、10kW以上50kW未満の低圧事業者が6.3万件にも及ぶ。遠隔制御装置の追加導入を含めた出力抑制への対応をいかにスムーズに進められるかが課題だろう。
 出力抑制指示に応じない場合、電力会社との契約解除やFIT認定取消しの可能性もある。上手く移行できるよう丁寧な対応が求められる。

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