〝卒FIT〞余剰買取り 大手電力のプラン出揃う
2019.07.30
PVeye
大手電力10社による〝卒FIT〟余剰電力の買取りプランが出揃った。「預かり」など想定外のサービスもあり、蓄電池関連会社との競争が激化しそうだ。(PVeye記者・岡田浩一)
6月27日、北海道電力と東京電力エナジーパートナーがFITの売電期間を終える住宅用太陽光発電の余剰電力に対する買取りプランを発表し、ついに大手電力10社のプランが出揃った。
各社の買取り単価は1kWhあたり7〜9円と「ほぼ想定通り」(蓄電池メーカー筋)だが、想定外だったのは沖縄電力を除く9社が単純な買取り単価だけではなく、多種多様なプランを示したこと。蓄電設備メーカーや蓄電設備の販売会社にとっては逆風となりそうだ。
たとえば、ほとんどの大手電力が打ち出した『預かりプラン』。これは住宅オーナーが自家消費用に蓄電設備を設置しなくても、逆潮流した電力を〝仮想的に〞ためて、自家消費したと見做す。売電価値に換算すると、1kWhあたり10円程度だが、初期投資が不要ゆえ、住宅オーナーの蓄電設備の購入意欲を削ぐことになるかもしれない。
だが、ある蓄電設備販売会社の担当者は、「一見、初期費用なしで蓄電設備を設置したように見えるが、このプランでは停電時に電力を取り出せない。蓄電設備とは全くの別物だ」と指摘する。自家消費量は増やせても、非常用電源にはなり得ないというわけだ。
確かに、住宅オーナーは蓄電設備の非常用電源としての価値に着目して購入しているケースが大半だ。預かりサービスとの差別化は維持されるのかもしれない。
蓄電池メーカーと連携も
一方、新電力会社も続々と買取りプランを発表している。買取り対象地域を全国にしたり、対象を自社顧客に限定する代わりに買取り単価を10円以上と高額に設定したり、大手電力との差別化を図り、顧客の囲い込みを狙っている。
買取りプランも多様化している。エネットは、NTTスマイルエナジーの取次ぎで7.2〜9.3円で買取る予定だが、パナソニックの蓄電設備やNTTスマイルの遠隔監視装置購入を条件に買取り単価を1年間限定で最大16円まで引き上げる。
NTTスマイルの試算では、蓄電設備導入による自家消費量増加と、16円への引き上げによる経済効果があわせて年間3万円程度なので、初期費用を考えれば経済効果は薄いが、16円のインパクトは大きい。
ある蓄電設備メーカー担当者は「昨年後半から、電力会社と話をする機会が増えた」と話す。すでに両者の〝接触〞は一通り済んでいる模様で、今後、卒FIT買取りプランと蓄電設備を組み合わせた複合提案は増えてくるだろう。
電力会社や蓄電池関連企業らが競争し、各社が凌ぎを削れば、住宅用太陽光発電オーナーへのサービスの質は向上するはず。今後の取り組みに期待したい。
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