架台施工不良で連系できず 施工店とメーカーが大揉め

2019.09.30

PVeye

 長野県の太陽光発電所で架台の施工不備が発覚し、系統連系が見送られることになった。施工会社と架台メーカーが揉めている。(PVeye・飯渕一樹)

 件の太陽光発電所は、長野県信濃町内に建設された出力213kWの高圧太陽光発電所だ。施工したのは、地元の建設会社、藤沢電気工業(長野県須坂市、藤澤一彦社長)。系統連系を控えた今年6月、電気保安協会の検査で架台の施工不備が発覚し、同社は保安協会から改修するよう奨められた。
 この電保協からの指導には法的な拘束力はないが、無視して売電を開始し事故が起これば、産業保安監督部への通達案件となる。設備の改善が求められ、改修期間中の売電収入が失われるため、施主である発電事業者の判断で、系統連系は一時取り止めとなった。
 現在、現場は設備の交換を待つ状況だ。テンフィールズが固定式の架台を提供し、400万円を返金する方向だったが、藤沢電気は同社の一連の架台の構造計算書に不備があると主張。見解は食い違い、連系はできないままだ。藤沢電気は自ら1300万円余りを負担し、別のメーカーの架台を採用する考えのようだ。
 この太陽光発電所は、架台の支柱とスクリュー杭の間隔が合わず、鉄骨の梁を介して繋げている状態だった。単管パイプやワイヤで補強されていたが、現地は豪雪地域。電保協は外観上強度に不安があると判断したのだろう。しかしなぜこのような状況に至ったのか。
 藤沢電気が施主から受注したのは2018年の春頃だ。同社はテンフィールズファクトリー(京都府精華町、市川裕社長)製の可動式架台を採用し、県内でコンクリート基礎を製販するアーマン(東京都渋谷区、武藤多加志社長)を通じて発注。だが、予定よりも納期が遅れ、18年10月下旬にスクリュー杭を、11月下旬に架台をそれぞれ受け取った。
 藤沢電気は10月下旬から杭の施工を始めたが、本来1700ピッチである杭の間隔を、2200ピッチと誤認していた。アーマンの武藤和洋事業本部長は、「発注当初から計算書には1700ピッチと記載があり、藤沢電気にも渡している」と話すが、藤沢電気側は、アーマン営業部の宮川和弘課長から2200ピッチと伝えられたともいう。真相は定かではないが、藤沢電気は工期が遅れていたこともあり、施工済みの杭を使って工事を進めた。
 トラブルはこれにとどまらない。藤沢電気の藤澤一輝取締役部長によれば、昨年末に架台の施工を終え、冬場の積雪を経た今年3月に現場を確認すると、3分の1程の架台で角度を変えるための歯車状の凹凸が削れ、使用不能になっていた。
 これについて、テンフィールズの市川社長は、「当社の予想を上回る積雪があったためだろう」としているが、藤沢電気の藤澤取締役は、「春にパネルを設置したが、可動部が明らかに弱そうなので補強材を入れた。5月ごろに施主やテンフィールズの立ち合いのもとで試しに補強を外すと、自重で可動部の凹凸が削れ、壊れてしまった」と話す。その後、市川社長から、角度を変えずに使用するための対応について提案を受けたという。
 ならば、架台そのものの強度が不足していた可能性もあるが、こうした経緯で太陽光発電所が建てられた。

甘い判断と連携不足

 藤澤取締役は、「積雪荷重の問題についてテンフィールズに再三問い合わせたが、問題ないの一点張り。埒があかず、やむを得ず自社で最善を尽くした結果が今回の有り様」と述べる。
藤沢電気が積雪への強度に最初に疑問を投げかけたのは昨年の架台到着時だ。テンフィールズがこれを受け、現地の積雪量の想定を再考すれば、何らかの対策が取れたかもしれない。施工会社の意見に対し、真摯さを欠いていなかったか。
 藤沢電気も、事前に深刻な懸念を把握していたのであれば、回答が明らかになるまで工事を中断するか、発注先を変更することもできたはずだ。工事を急ぐあまり、判断を先送りにしたと言えなくもない。
 いずれにせよ、今回の問題は、関係各社の判断の誤りや連携不足が招いたといえよう。被害者は施主であり、仮に事故が起これば、近隣の住民も被害者となり得る。あるいは、太陽光発電への風当たりが強まっているいま、事故による悪評は業界全体に影響しかねない。太陽光関連企業には強い自覚が求められる。

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