低圧太陽光の全量売電終了へ 自家消費の余剰のみ支援

2019.12.01

PVeye

 来年度のFIT売価を決める議論が始まるなか、FITによる低圧太陽光発電の全量売電を終了する方針が示された。自家消費利用を前提とした余剰売電のみとなりそうだ。(本誌・岡田浩一)

 「低圧太陽光を余剰に」。
 10月10月28日、経済産業省は有識者会議『再生可能エネルギー主力電源化制度改革小委員会』の第3回を開催し、その方針を示した。同委員会は、再エネの主力電源化に向けて長期的な制度のあり方を検討する会合で、主に2021年度以降の制度の枠組みを議論する。
 その委員会で経産省は、低圧太陽光発電に対して「自家消費用での普及を促すべき」との案を示した。そして善は急げといわんばかりに、現行の制度内で20年度から低圧太陽光発電の全量売電は認めず余剰売電にする方向で話をまとめた。
 売電単価や売電期間、余剰の定義などは『調達価格等算定委員会』で話し合うようだが、11月19日時点ではまだ低圧太陽光発電に関する議論は始まっていない。
 ポイントは余剰の定義だ。仮に総発電量の1割でも自家消費すれば、残り9割の余剰売電を認めるのであれば、地上設置型でも事業化は可能かもしれない。
 だが、委員からは、「形だけの自家消費、実質全量売電のような〝抜け道〞を探る事業者が出てくるはずなので、余剰の定義を明確にすべき」との意見が出た。厳しい基準が設けられるのは想像に難くない。
 ならば、低圧太陽光発電の地上設置案件は事業として成立しなくなるかもしれない。低圧太陽光発電所の開発に力を入れる販売・施工会社の社長も、「低圧の野立て案件は実質終わった。次を探らなければ」と危機感を募らせる。
 ただ、適用開始時期はまだ決まっていない。20年4月の認定取得案件から適用するのか、あるいは一定の経過措置期間が設けられるのか。というのも、再エネ主力電源化制度改革小委で太陽光発電協会が「20年度も従来通り全量売電だと想定し、土地の買取りを始めている事業者もいる。経過措置を設けるべきではないか」と指摘したように、すでに土地の買取りを始めている企業が存在するためだ。

100kW以上は入札か

 一方、経産省は算定委で出力50kW以上の太陽光発電と住宅用太陽光発電に関する議論を始めた。
 50kW以上の事業用太陽光発電は、入札の対象を広げる方針で、100kW以上を入札対象にする案を示したが、詳細は12月17日に公表する第5回太陽光入札の結果を踏まえて決める。
 住宅用太陽光発電の余剰売電単価は、従来は導入費の安い新築向け太陽光発電の導入費実績から算定していたが、来年度の単価は既築向け太陽光発電の導入費実績も加味して算定する。既築住宅への太陽光発電設備導入量が減少傾向にあることから配慮した形だ。
 これは一見、住宅用太陽光発電への追い風ともとれるが、関東の販売・施工会社役員は、「11月8日に今年度分の申し込み期限が終わったが、来年度の価格が決まっておらず、提案ができない。とくに新築向けの機会損失が大きいので一刻も早く決めて欲しい」と訴える。

脱FIT依存へ

 また、21年度以降を見据えた長期的な制度のあり方の議論も始まっている。再エネ主力電源化制度改革小委では、再エネは競争電源と地域活用電源の2つに大別して普及を促していくという。
 競争電源とは、事業用の太陽光発電や風力発電で、一定の価格競争力がついたという観点から国の支援を外して自立させる方針だ。21年度以降のFIT抜本見直しの対象で、発電事業者が市場で電力取引する仕組みを構築していく。
 一方の地域活用電源は、住宅用太陽光発電や小規模太陽光発電、バイオマス発電、小水力発電などで、自家消費や地域内で活用し、かつ災害時の使用なども前提に、当面はFITで支援していく。今回、低圧太陽光発電を自家消費で普及させるというのも、立地制約が小さく、需要地の近くで設置が容易である電源と見做されたためだ。
 ともあれ、いつまでもFITに依存するわけにもいかない。自家消費をはじめ、FITに頼らない事業づくりが求められている。

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