新型コロナで材調達に支障 浮上する完工期限超過の懸念

2020.04.01

PVeye

 猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、太陽光関連製品の納期が遅れている。太陽光発電所の完工が期限を超過し、損失が発生する懸念もある。(本誌・平沢元嗣)

 新型コロナウイルスの猛威が収束する気配はない。3月17日現在、世界で17万人以上が感染し、死者は7000人を超えた。この状況を世界保健機関はパンデミックと位置づけ、世界的な非常事態だと宣言した。
 経済への影響も甚大だ。ニューヨーク株式市場では、16日のダウ平均株価の終値が2万188米ドルで、前週末比3000米ドル近く下落し、過去最低の下げ幅を更新。日経平均株価も年始には2万3000円を超えていたが、3月18日には3年4ヵ月振りに終値が1万7000円を割った。
 東京商工リサーチが2月と3月に新型コロナウイルスによる企業への影響を調査したところ、影響が「出ている」と答えた企業は、2月時点で23%だったが、3月には55%弱に増えた。情報本部情報部の原田三寛部長は、「19年と20年の2月の売上高を比較すると、7割の企業が売上高を落としている」という。

部材調達に苦慮

 中国政府は、感染拡大を防ぐため、空港や鉄道駅、道路を相次ぎ封鎖し、春節休暇を2月2日まで延長。地方によっては2月2日以降も企業に営業活動の自粛を要請した。このため、中国の物流は滞り、製造業は軒並み生産縮小に追い込まれ、太陽光関連企業も打撃を受けた。言うまでもなく、太陽光パネルからPCS(パワーコンディショナ)や架台まで、主要設備の大半は中国で生産されているからだ。
 厦門の工場に製造委託をしているある架台メーカーの社長は、「春節休みが伸び、帰省していた出稼ぎ工員が仕事に復帰できず、しばらく工場の稼働率が戻らなかった。1ヵ月半から2ヵ月間全く納品できず、1億円弱の減収だ」と嘆き、「中国の物流会社は単価の高い半導体関連製品などの輸送を優先し、太陽光パネルや架台は後回しにしている」と続ける。
 中国大手太陽光パネルメーカー、ライセンエネルギーのディリア・ディ日本法人副社長は、「各地の交通網が遮断されたため、バックシートやガラスの調達が遅れ、生産に支障をきたした」とし、「通常は1ヵ月で製品を供給しているが、いまは4ヵ月程かかると顧客に説明している」と語る。
 他にも、国内PCS大手の田淵電機や新電元工業は、ハーネスなどの部材を中国から調達しており、一部入手が困難な部品があるという。3月中旬時点で、まだ代替品の調達に目途がついていない部品もあるようだ。
 一方で、品質管理が行き届かない懸念もある。日本人が中国へ渡航する際、ビザなしの滞在期間は15日間だが、現在日中両国は互いの国からの入国者を2週間隔離している。つまりビザがなければ事実上中国には1日しか滞在できないのだ。それだけに先の架台メーカー社長は、「本来は対面で打ち合わせして現地で製品の状態を確認したいが、しばらくは難しい」と諦め顔だ。

期限超過で損失発生か

 部材の生産に支障があれば、当然EPC(設計・調達・建設)にも影響が及ぶ。「製品を調達できず、工事が遅れ、顧客への弁明に走り回っている」(東北の販売・施工会社社長)といった嘆き節や、「住民説明会を予定していたが開催できず、着工に移れない」(EPC筋)といった声が聞こえてくる。
 問題は、今年3月末に運転開始期限を迎える案件が完工できない事態に陥ることだろう。FIT法の改正によって、発電事業者は事業計画認定を取得後、一定の期日までに運転を開始しなければならず、その最初の期限が3月末なのだ。
 運開期限が3月末の案件は、16年度までに設備認定を受け、接続契約の締結が同年8月1日以降だった10kW以上のすべての案件と、14年度中に設備認定を取得し、16年7月以前に接続契約を締結したうえで、19年3月までに系統連系工事着工申込みを済ませている2MW未満の案件である。
 太陽光発電事業者連盟の専務理事を務める千葉エコ・エネルギーの馬上丈司社長は、「期限に間に合わない案件が少なくないだろう。すでに3月中の完工を諦めた事業者もいるようだ」と話す。
 むろん、運開期限を過ぎても、売電期間が1ヵ月単位で短縮される形になり、事業計画認定そのものが失効されるわけではない。仮に完工が期限より1日遅れれば、発電事業者は1ヵ月分の売電収入を失うことになる。それを誰が負担するのか。大手企業のように資金に余力があればよいが、中小企業にとっては大きな痛手となる可能性がある。
 太陽光発電事業者連盟は、経産省に運開期限の延長を求めているが、いまのところ経産省は救済措置を講じていないようだ。
 ともあれメーカーの生産体制は平時に戻りつつある。もうしばらくの辛抱だ。

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