日立製作所 系統安定化技術を開発
2013.03.18
PVeye
日立製作所( 中西 宏明社長)は、再生可能エネルギーの導入に際して世界的な課題となっている系統電圧の安定化、ならびに新興国における電力系統の安定運用を目的として、低コストで拡張性に優れた系統電圧安定化技術を開発した。
本技術は、既存の配電系統上にある自動電圧調整器(SVR)や静止型無効電力補償装置(SVC)などの各機器の電圧・電流を、系統内通信ネットワークを用いて計測し、それに基づき系統全体の電圧を推定し、予め設定した目標値との偏差を解消するように各機器の電圧を分散的に制御する技術となる。試算によると、住宅1000戸のうち40%が太陽光発電を導入した配電系統を想定して、SVCを2台用いた場合、系統電圧が規定電圧を逸脱する頻度を3%に低減させる効果を得ることができたという。同社では今後、国内外の実証実験による効果の検証を進ていく予定だ。
既存の配電系統では、SVRやSVCなどの電圧調整機器を個別に制御して、電圧を規定範囲内に維持している。一方、配電系統に太陽光や風力等の再生可能エネルギーが大量に導入されると、天候により発電量が大きく変動し、規定電圧の逸脱が想定されている。こうした規定電圧の逸脱を防ぐ手段のひとつとして、系統全体に整備した通信ネットワークによる電圧調整機器の集中的な制御が検討されているが、通信設備をはじめとする設備投資コストが実用化の課題となってきた。
今回、日立では計測した各機器の電圧・電流から系統全体の電圧を推定する機能(状態推定機能)と、他の機器の動作を推定して電圧調整量を最適配分する機能(推定制御機能)から構成される、大域推定分散制御技術を開発した。本技術により、配電系統におけるエリアごとの再生可能エネルギーの導入状況に合わせた段階的な設備投資が可能となり、電圧調整機器を集中的に制御するよりも安価なコストで系統電圧の安定化が実現できるという。
開発した大域推定分散制御技術の特長は以下の通り。
(1) 状態推定機能
配電系統の電圧と電流の関係を表す電力方程式を、部分的な計測値と連立させて解くことで、系統全体の電圧と電流を推定して補完する機能となる。本機能を分散コントローラごとに備えることで、各分散コントローラにおける系統電圧の把握と、制御への活用が可能になる。
(2) 推定制御機能
補完された系統電圧に対する他の電圧調整機器の動作推定に基づき、系統全体の電圧偏差を解消するように電圧調整量を最適配分する機能。通信ネットワークの制約から分散コントローラ間で制御情報が共有できなくても、本機能を分散コントローラごとに備えることで、各分散コントローラが協調して電圧調整機器を制御し、電力需給の変化や電力流通設備の段階的整備に応じて系統電圧の安定化を図る。
なお、この成果について、日立では3月20日から名古屋大学で開催される電気学会全国大会において発表する予定だ。
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