リコー（東京都中央区、三浦善司社長）は6月11日、室内光における発電性能を大幅に向上させた完全個体型の色素増感太陽電池の開発に成功したと発表した。安全性や耐久性を確保したうえ、アモルファスシリコン太陽電池と比べて2倍以上の高出力を達成できたとしている。
　散乱光や屋内照明などの微弱光でも効率よく発電できる次世代型太陽電池として注目されている色素増感太陽電池は、色素の可視光吸収を利用して発電するもの。表面に有機色素を吸着したナノメートルサイズの酸化チタン粒子からなる多孔質の膜を形成した透明導電性基板と、金属薄膜を形成したガラス基板の間にヨウ素系電解液を封入するのが一般的で、実用化のためには、さらなる発電効率の向上に加え、液体の電解質を用いるため、安全性（ヨウ素や有機溶媒の揮発や電解液漏れ）や耐久性（電解液による酸化チタンに吸着した有機色素剥がれ）に課題があった。そこで同社は、これらの課題を材料、構造、製造方法における独自技術の開発で克服。複合機に用いられている有機感光体とデバイスの構造が類似しており、リコーが保有する材料技術やデバイス作製技術を活かしたという。
　同社は色素増感太陽電池に、有機P型半導体と固体添加剤で構成されたホール輸送性材料を採用、リコー独自の製膜技術（超臨界流体二酸化炭素：SCF-CO2下での製膜）により、ナノレベルの酸化チタン粒子の多孔質膜内部にホール輸送性材料を高密度に充填することに成功。これにより、液漏れやヨウ素による腐食や人的有害性のリスクがなくなり、一般的な液体型の色素増感太陽電池のもつ技術課題を解決したという。
　また、電解質を固体材料のみで構成するにあたり、固体添加剤とデバイス構造を最適化、発電効率を大幅に向上させた。室内光源波長に適した有機色素設計を施すことで、室内光における高い発電性能を得ることにも成功したという。標準的な白色LED（200ルクス）において、市場でトップレベルの性能とされているアモルファスシリコン太陽電池（6.5μW/㎠）と比べ、新開発の固体型色素増感太陽電池は、13.6μW/㎠と2倍以上、これまでに発表されている最も高性能な電解液型色素増感太陽電池（8.4μW/㎠）と比べても1.6倍以上の優れた発電性能を確認できたとしている。様々な耐久性試験も実施、85℃の環境下で2,000時間後においても最大出力値の低下はなかったという。
　同社は、「今後ますます需要が高まると予想されるセンシング用途などの自立型電源（外部電源を必要とせずに発電可能）として実用化が期待されます」としている。