稼働1年のメガソーラー発電所はどれくらい発電したか……特徴の違い

2013.02.28

RBB TODAY

 2012年12月に東京電力が、自治体と共同で進めている太陽光発電プロジェクトの稼働実績について発表を行った。発表は、メガソーラー発電所の稼働1年を超えて、各発電所の発電実績がどれくらいだったのかについてのデータを公開している。

 発表資料によると、東京電力が現在進めているプロジェクトは、川崎市と共同のものが2か所(浮島、扇島)、山梨県と共同のものが1か所(米倉山)の3か所だ。メーカーによって想定発電量の計算方法は異なるが、それぞれ想定していた年間発電量を超える実績をだしているとのことだ。

 詳細を見ていこう。まず、各発電所の設備諸元をまとめると以下のようになる。

●浮島太陽光発電所(川崎市)
ソーラーパネルメーカー:シャープ
最大定格出力:7,000kWp
年間発電量(想定):7,400,000kWh
年間発電量(想定)を一般家庭の年間使用量に換算:2,100世帯分
年間発電量(実績):9,450,000kWh
想定発電量あたりの実績:1.3倍
定格出力1kWpあたりの実発電量:1,350kWh/kWp

●扇島太陽光発電所(川崎市)
ソーラーパネルメーカー:京セラ
最大定格出力:13,000kWp
年間発電量(想定):13,700,000kWh
年間発電量(想定)を一般家庭の年間使用量に換算:3,800世帯分
年間発電量(実績):15,100,000kWh
想定発電量あたりの実績:1.1倍
定格出力1kWpあたりの実発電量:1,162kWh/kWp

●米倉山太陽光発電所(山梨県)
ソーラーパネルメーカー:ソーラーフロンティア
最大定格出力:10,000kWp
年間発電量(想定):12,000,000kWh
年間発電量(想定)を一般家庭の年間使用量に換算:3,400世帯分
年間発電量(実績):14,400,000kWh
想定発電量あたりの実績:1.2倍
定格出力1kWpあたりの実発電量:1,440kWh/kWp

 3か所とも、発電量の実績値は想定発電量を上回っている。太陽光発電は、天候などの気象条件に大きく影響を受けるため、定格出力や設置面積、セルの出力などの定量的な比較だけで論じることは難しい。浮島は、3ヵ所の中で最小規模ならが、発電量の実績/想定比では最大の130%となっている。扇島は、他と比較すると効率が若干落ちるものの、発電の総量は最大規模である。米倉山は両者の中間的な位置づけといえるだろう。

 ただ、米倉山の発電所は他と突出した特徴がある。実発電量の効率のよさだ。最大定格出力に対する実発電量は、3ヵ所中トップ(1,440kWh/kWp)である。

 影響がありそうなのは、前述の通り、まず設置場所の気候条件だ。次にソーラーパネルそのものの性能が考えられる。調べると、川崎市のパネルはどちらのメーカーもシリコン多結晶型と呼ばれる太陽電池セルを利用している。米倉山のソーラーパネルは、CISと呼ばれる化合物系のセルを利用している(CISは人工衛星のソーラーパネルに多く採用実績がある)。

 面白いのは、一般的に発電条件が同じであればシリコン多結晶型の太陽電池のほうが発電効率が高く、出力も多くとれる。各メーカーのカタログなどを比較しても、単体の発電効率はCISよりシリコン多結晶型なのだ。

 しかし、実際にソーラーパネルとして現場に取り付けて実際に発電した量を調べると、CISパネルのほうが高い数値となる。ソーラーフロンティアや同社とCIS薄膜型太陽電池の実用化研究を行っていたNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のウェブサイトによれば、CISパネルは、温度特性、部分的な影に強い、日照を受けるほど出力特性が上がる性質がある、という3つの特徴があるという。

 シリコン系の太陽電池は、光を受けてパネルの温度が上がってくると、出力特性が落ちるという欠点があるのだが、CISはその落ち込みが少ない。また、複数の発電セルをつなげて1枚のパネルを構成するシリコン系のパネルは、部分的な影ができるとその分の出力が落ちてしまう。CISはパネル全体が1つのセルとなっているため、部分的な影の影響を受けにくい。日光を受けるほど出力が上がるというのは、暴露試験で確認された効果だそうだ。

 東京電力が発表した、3ヵ所のメガソーラー発電所についての発電実績から、それぞれの特徴を考察してみた。発表データをもって特性や性能などを断じることはできないが、実発電量という視点では、主流のシリコン系多結晶型パネルだけでなく化合物系のCIS薄膜パネルも十分な性能を持っているといえそうだ。家庭にソーラーパネルを導入する際に、こういったメガソーラー発電所の特徴を参照して、機種を選定するとよいだろう。
《中尾真二》

2022.07.27

PVeye

ヤマガタデザイン、山形県内でPPA展開 教育分野に資金還元

街づくり会社のヤマガタデザイン(山形県鶴岡市、山中大介社長)は2022年7月、太陽光発電のEPC企業、FD(愛知県刈谷市、鈴木政司社長)と、冠婚葬祭業のジョインの施設に太陽光発電設備を設置した。第1号続きを読む

2022.04.08

PVeye

伊藤忠商事、米国に再エネ開発会社設立

 伊藤忠商事は2022年3月24日、米国で再生可能エネルギー発電所開発会社を設立したと発表した。再エネ発電所の開発に特化する事業会社を立ち上げ、効率的な開発と収益の拡大を狙う。主に太陽光発電所を開発し続きを読む

2022.04.07

PVeye

北海道電力、太陽光ゼロ円設置開始 新築住宅向け

 北海道電力は2022年3月1日、新築住宅の所有者が住宅用太陽光発電設備を初期の負担なく設置できるサービスを開始した。顧客とリース契約を結び、毎月定額の料金を徴収する。
 同社は、今回の続きを読む

2022.03.08

PVeye

セイコーエプソン、富士見事業所に太陽光導入 SMFLみらいとPPA

 プリンター製造のセイコーエプソン(小川恭範社長)は2022年2月15日、長野県富士見町内の事業所に太陽光発電設備を導入した。三井住友ファイナンス&リース子会社のSMFLみらいパートナーズとPPA(電続きを読む

2022.03.07

PVeye

キユーピー、FIT太陽光を実質再エネに 神戸工場にはPPA導入

 食品大手のキユーピー(長南収社長)は2022年2月20日、既設の太陽光発電設備を活用して渋谷本社と研究施設で使用する電力を実質再生可能エネルギー電力に切り替えた。神戸工場にはPPA(電力売買契約)で続きを読む

2022.03.02

PVeye

横浜環境デザイン、PPAで太陽光導入

 太陽光発電設備の販売・施工やO&M(管理・保守)を手掛ける横浜環境デザイン(横浜市、池田真樹社長)は2022年2月7日、マテックス(東京都豊島区、松本浩志社長)の横浜事業所に太陽光発電設備と蓄電設備続きを読む

2022.03.01

PVeye

エムケイジャパン、可搬型蓄電設備発売 蓄電容量2kWh

 中・イーノウの国内総代理店であるエムケイジャパン(東京都荒川区、林軍社長)は2022年2月2日、電子商取引サイトでイーノウ製の可搬型蓄電設備を発売した。従来品より価格を抑え、民生用の非常用電源として続きを読む

2022.02.28

PVeye

シン・エナジー、リコー子会社にPPAで太陽光カーポート導入

 新電力会社のシン・エナジー(兵庫県神戸市、乾正博社長)は2022年2月16日、リコー(山下良則社長)の100%子会社、リコーインダストリー(神奈川県厚木市、戸倉正社長)に太陽光パネルを搭載したカーポ続きを読む

2022.02.17

PVeye

グッドオンルーフス、アフリカに太陽光無償提供 国連開発計画と提携

 アフリカで電化事業を手掛ける一般社団法人グッドオンルーフス(東京都千代田区、草賀純男代表理事)は2022年1月21日、国連開発計画のブルキナファソ事務所(マチュー・シオヴェラ代表)と契約を結び、太陽続きを読む

2022.02.12

PVeye

西海市、日産自らと脱炭素化で協定締結

長崎県西海市は2022年1月28日、日産自動車(内田誠社長)ら9社と市内の脱炭素化に向け、連携協定を締結した。電気自動車や再生可能エネルギーを普及させ、脱炭素化を進めつつ、災害に強い町づくりを目指す。続きを読む