筑波大、発電中の高分子太陽電池の劣化の原因を解明
2013.02.28
筑波大学は2月27日、高分子太陽電池に光を照射して蓄積する電荷の状態を解明し、それが特性の劣化と明らかな相関があることを観測したと発表した。
成果は、同大 数理物質系 丸本一弘 准教授らによるもの。詳細は、独科学雑誌「Advanced Materials」のオンライン速報版で公開された。
高分子太陽電池は、軽量かつ柔軟性が高く、そしてSi結晶系の太陽電池に比べて安く大量生産できるという特徴を有しており、変換効率も近年の研究では11%に達するなど、実用化への期待が高まっているが、耐久性の向上が課題として残されている。高分子太陽電池では、光を照射すると、酸素や水分がない状態でも、素子の特性が劣化することが知られているが、これまでは素子内部に蓄積された電荷が原因と考えられていたが、従来の電気的測定手法などでは電荷が蓄積した場所を特定できなかったほか、電荷の蓄積と特性の劣化との相関を証明できなかったため、高分子太陽電池の耐久性向上の指針を得ることができなかった。
研究グループではこれまでの研究から、新たに電子スピン共鳴法(ESR法)を用いた手法を開発し、それにより太陽電池の素子作製時に、光を照射していない状態でも素子中に電荷が発生し、それが特性を劣化させていることを明らかにしていたが、今回の研究では、光を照射した状態で素子のふるまいを調べることで、素子内の電荷が蓄積した場所の特定を進め、特性の劣化との相関の解明が進められた。
通常のESR信号の測定では、装置の安定性の問題から、高い精度で再現性のあるESR信号の測定ができないという課題があった。そこで今回は、光を照射した状態でESR信号を測定する際に、標準試料を同時に測定することを可能にすることで、素子中に蓄積された電荷の数をリアルタイムで精密に計測することに成功した。
具体的には、高分子太陽電池の正電荷を運ぶ高分子材料にポリヘキシルチオフェン(P3HT)、負電荷を運ぶ材料にフラーレン誘導体(PCBM)、正電荷の取り出し層材料にPEDOT:PSSといった標準的に使われている有機材料を用いて素子を作製。光を照射している状態でESR信号を測定し、電荷が蓄積した場所の解析を行った。
その結果、光を照射した状態では、徐々にESR信号が増加するが、併せて得られたESR信号のg値(g=2.0022)とESR信号の線幅ΔHppの値(ΔHpp=0.25mT)から、高分子材料中に電荷が蓄積されていることが判明。これは、従来の電気的測定などでは知ることができない直接的な結果だと研究グループでは説明する。
さらに、このESR信号から蓄積された電荷の数を求めると同時に、素子特性(短絡電流密度)も測定したところ、光を照射する時間が増加するにつれ、蓄積された電荷の数も増加し、特性が劣化することが確認され、これにより電荷の蓄積と素子の特性とは相関することが示され、高分子材料中の電荷蓄積が特性の劣化を引き起こしていることが確認されたという。
なお、今回の結果を受けて研究グループでは、今後、今回の手法がさまざまな太陽電池素子や有機材料などに用いられるようになることで、従来の電気的測定などでは不可能であった素子劣化の問題を解決することが可能となり、それにより耐久性の向上が果たされ、実用化へ大きく前進することが期待されるとするほか、太陽電池以外の有機トランジスタや燃料電池などのあらゆる有機系デバイスへ適用できることが分かっていることに加え、原理的には、無機系デバイスにも適用できる可能性があることから、幅広く応用する検証を進めることで、将来的には、広範なデバイスの特性の向上に役立つことにつながることも期待されるとコメントしている。
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