「将来を見据え、10年後も存続できるPV経営を」 ヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの市場予測

2016.12.01

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 欧州の太陽光発電事情に詳しいヨーロッパ・ソーラー・イノベーションの土肥宏吉社長が、日本の太陽光発電市場の未来を予測、独自の経営観を示した。

 日本の太陽光発電市場の将来予測に関して、私は他のアナリストよりもコンサバティブに見ています。予測は外れるものですから、悲観的予測が外れて上振れするのと、楽観視が外れて想定外の厳しい現実に直面するのとでは、当然ながら前者の方がよいからです。
 昨年、日本で太陽光発電は約9GW導入されましたが、PV業界の関係者ならば、この状況がいつまでも続くとは思っておられないはずです。では、2025年には一体どの程度の規模になるでしょうか。
 保守的な予測では、約3GWへ縮小していくと言われています。25年には、メガソーラーの開発は一部に限られ、中小規模の太陽光発電所や住宅用太陽光発電などの屋根上設置が中心になるでしょうから、3GWという予測は大きく外れていないように思います。 
 ただこれをもって、日本の太陽光発電市場が10年後に3分の1に縮小するという見通しに止まってしまうのは少々安直でしょう。経済規模は、さらに縮小しかねないからです。
 15年時の太陽光発電所建設の経済規模は、導入量が9GWでしたから、これにIRENAの統計による15年時の太陽光発電所の標準的な建設コスト18万円/kWを掛け合わせると、約1・62兆円となります。それが25年は、導入量3GWに対して建設コストはIRENA統計によると8万円/kWと予想されていますから、約2400億円です。
 確かに、O&M(発電所の管理・保守)市場が立ち上がるでしょうが、ドイツなどの例をもとに推計すると、300億円程度と思われます。発電所建設とO&Mを合わせても2700億円ですから、25年の経済規模は15年時の僅か6分の1に縮小する可能性があるのです。

減収減益は避けられない

 もちろん企業間淘汰が進みます。生き残った企業はシェアを伸ばせるかもしれません。しかし、果たして現状と同じ収益を確保できるでしょうか。
1 6年に太陽光発電所を100MW完工したEPC企業を例に挙げます。16年の太陽光発電の国内導入量を8GWとすると、この企業の建設シェアは1.3%です。1MWの建設原価は1.8億円が相場ですから、2000万円の粗利を得て2億円で建設したとしましょう。このEPC企業の売上高は200億円、営業利益は20億円なので、200人規模の雇用を確保できるでしょう。
 ただ19年になると、市場規模は4GWに半減します。それでも、このEPC企業はシェアを倍に増やし、かつ16年時と同じ粗利率10%で発電所を建設したとしましょう。仕事量は16年時と同じく100MWです。しかし19年には1MWの建設原価がIRENA統計では1.3億円まで下がると予想されていますから、粗利は約1400万円となります。売上高は144億円、営業利益14億円となり、16年の業績と比べて約30%の減収減益となってしまうのです。
 25年になっても、EPC企業はもちろん、パネルメーカーやパワーコンディショナメーカーなども16年と同じ業績を維持することは可能でしょう。ただし、シェアを3倍に伸ばし、かつ粗利率を2倍に引き上げなければなりませんから、価格競争が進むなかで、それは非常に難しいことです。
 ゆえに、将来を見据え、適正な人員で事業を進めながら、新しいビジネスモデルの構築が必要になるのではないかと考えます。

ヨーロッパ・ソーラー・イノベーション株式会社
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