山佐がメガソーラーを開発する理由 単独で500MWへ32円案件も購入検討
2016.06.01
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スロットマシンの製販から航空機や船舶のリースまで多角化経営で業績を伸ばす山佐(岡山県新見市、佐野慎一社長)。数千億円のバランスシートを生かしてメガソーラーを開発し、ID保有案件はすでに344MWに達した。同社の狙いとは。
「できることなら、太陽光発電所を500MW運開したいと思っています」。
佐野社長は、「2017年3月まで」と期間を定めて太陽光発電所の開発に意欲的だ。条件は、買取り価格40円もしくは36円の案件だが、条件がよければ32円案件の購入も検討するという。
国内の太陽光市場では、設備認定を取得して電力会社への接続申し込みを終えたプロジェクトでも、20GW以上の案件が滞留していると言われている。ブローカーによる権利売りも阻害要因のひとつのようだが、無制限の出力抑制による金融機関の貸し渋りや、上位系統の張り替えに対して発電事業者が工事費を負担できないなど、資金面で難航している例も少なくない。
しかし17年4月に改正FIT法が施行されれば、無情にも滞留案件は一掃され、開発機会そのものが失われかねないのだ。残された時間は1年しかないのである。
それだけに、佐野社長は、「我々が力になれることがあるかもしれません。たとえば、一時的に必要な工事費負担金は、当社であれば案件によって自己資金で用意することも可能です」とし、「諸事情で事業化が難しく、売却を希望される方は、ぜひとも当社に声をかけてください」と強調した。
ではなぜ山佐は太陽光発電所の開発を強めているのだろうか。その理由を探るには歴史を辿る必要がある。
山佐は今年で創業49年目を迎える。その山佐の前身となる佐野商店は、1868年に創業し、木炭の製造に始まり、以降、鉄道枕木を国鉄に納入する製材業を営んでいた。
飛躍を遂げたのは、1970年に佐野慎一氏が3代目社長に就任し、コンピュータ制御技術による日本初のスロットマシンを世に出してからだ。スロットマシンメーカーとして全国展開を強め、業績を大幅に伸ばしたが、浮き沈みの激しい事業でもあった。そこで86年には経営基盤の安定化を目的に航空機や船舶のリース業に着手。以後、航空機の保有台数を着々と増やし、現在は182機と、国内トップの実績を誇る。
太陽光発電事業に参入したのは13年だ。後発ながら、潤沢な資金力と金融機関との信頼関係を強みに事業化を進め、今年4月末時点で104MW分の太陽光発電所を稼働、ID保有案件は344MWに達した。特徴的なのは、プロジェクトファイナンスを一切使用しない点だ。理由は「償却を目的としていた」(佐野社長)ためだが、自社単独のコーポレートファイナンスのみで、ここまで発電所を開発した事業者はほかにない。
こうした経緯を見ると、飛躍を生んだスロットマシンの製造から航空機リースや発電所開発へ展開し、資産を増やして経営基盤の構築に成功したわけだが、それを支えたのは、約50年という長きにわたって事業を継続してきた過程で組織に根づいた社会連帯や相互扶助の精神だったのではなかろうか。
発電所開発を続ける理由について、佐野社長はこう語った。「当初は特別償却を目的とし、一時的な事業と考えていましたが、事業規模が拡大し、開発・運営に携わる方が増えると自然と本業になっていく、これはスロットや飛行機リース事業が歩んできた道と一緒です」。
「いまは案件開発に精一杯ですが、やがては保有する発電所を生かしたエネルギー事業へ展開できればと考えています。ただ、現状、当社にはその力がありません。当社のエネルギー事業を率いてくれる次世代のリーダーを探しています」。
約50年の歴史が生んだ山佐の太陽光発電所。今後どのような未来を拓くのだろうか。
山佐株式会社 環境エネルギー事業部
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