太陽光の名脇役 カワムラがO&Mを始めた理由

2016.02.01

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 キュービクル大手の河村電器産業(愛知県瀬戸市、水野一隆社長)が昨年11月、太陽光発電のO&M(オペレーション&メンテナンス)サービスを始めた。発電所の長期安定稼働に寄与するとの理念を掲げ、本腰を入れている。老舗の受配電機器メーカーが、なぜいまO&Mなのか。

 キュービクルや接続箱、集電箱の製販で国内トップクラスの実績を持つ河村電器産業。2015年度は、50kW以上2MW未満の太陽光発電所にキュービクルを2000基以上納入する模様で、国内の販売シェアは30%を超える勢いだ。いまやPV用周辺機器のリーディングメーカーとして不動の地位を確立している。
 その〝名脇役〞が15年11月から異分野のO&Mサービスを開始した。50kW以上の太陽光発電所を対象に、「遠隔監視」、「障害対応」、「定期点検」の3つを標準パックにした『エネキューアイ』という一見、標準的なO&Mサービスであるが、細部を見れば、随所に同社のこだわりが伺える。
 たとえば「遠隔監視」。通常PCS(パワーコンディショナ)を常時監視して発電量をモニタリングするが、同社はキュービクル監視まで標準サービスとして提供する。「キュービクルから系統へ流す電力の計測は売電収入を求めるうえで非常に重要」(マーケティング統括部東日本ビジネス開発課の岩﨑晃大氏)との考えからだ。
 また、異常時に現地に駆けつけて故障個所を特定する「障害対応」でも、同社は駆けつけの回数に制限を設けず何度でも応じる。パートナー企業と提携し、全国408拠点、4000名のエンジニアによって、離島を除く全国の発電事業者へサポートする徹底ぶりだ。
 これらに、年1回の「定期点検」を含めて標準パックを構成したが、ほかにも、駆けつけを除く現地代行訪問やカメラ監視、除草、パネル洗浄などもオプションで用意。多様なニーズにワンストップで対応できる体制を整えたのである。
 岩﨑氏は、「時間の経過に伴い、求められるメニューも変わってくるでしょう。ユーザーさんの要望を汲み取りながらサービスの内容を拡充していきます」と意気込む。
 O&Mサービスの料金は、発電所の発電容量ごとに設定されており、300kW〜2MW未満の発電所がコスト的に導入しやすいようだ。

長期安定稼動への挑戦

 では、なぜ受配電機器メーカーのカワムラが、O&Mを始めたのだろうか。EPC(設計・調達・建設)や発電事業へ業容を拡大するパネルメーカーでも、O&Mに着手するところは少ない。異分野への参入は容易ではないだけに、相当な決意があったはずだ。 
 むろん、太陽光発電所の建設需要の縮小を想定し、ストック市場での成長戦略という目論見もあろう。しかし岩﨑氏は参入の経緯をこう強調した。
 「これまではメーカーとして〝安全・安心〞を念頭に製品を開発してきましたが、ハードの提供だけでは片手落ちだと考えるようになりました。O&Mで長期安定稼働を後押しし、社会貢献したかったのです」。
 太陽光発電所が、国民の負担で成り立つFITの助成で誕生し、そのおかげでメーカーとして成長した。だが、基幹電源として国民の利益に資するべき発電所が、施工不良が相次ぎ、長期の安定稼働すらままならない実態がある。この課題に対し、政策的に適切な点検や保守の義務化が進められる方向だが、やはり業界の自助努力で改善していくべきであろう。
 カワムラには、PV企業としての責務を果たそうという確固とした理念があり、それが新事業へ挑戦する原動力を生み出しているのだろう。振り返れば、業界で初めて開閉器容量20Aの接続箱を開発し、20A接続箱では総回路数を削減してシステム全体のコスト低減に貢献してきた同社だ。O&Mでも新たなイノベーションを巻き起こすかもしれない。
 「太陽光市場で、20年以上にわたる長期運用の一翼を担えればという思いで開閉器ひとつから自社開発に力を入れてきました。その方針は、製品開発にしても、O&Mサービスにしても変わりません。O&Mは異分野ですが、メーカーとして培った経験やノウハウを少なからず生かせると思います」(岩﨑氏)。
 発電量低下の原因は、パネルやPCSの異常に加え、キュービクルや接続箱、集電箱の故障も少なからず存在する。そんなとき、受配電機器メーカーの同社に依頼すれば、的確かつ迅速に解決してくれるに違いない。
 カワムラの挑戦は始まったばかり。今後に注目だ。

[問い合わせ先]
河村電器産業株式会社
マーケティング統括部岩﨑・荒木・佐藤
TEL:03-5759-0027
E-mail:marketing@kawamura.co.jp
HP:www.kawamura.co.jp

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