東大、ペロブスカイト太陽電池の長寿命化に成功 従来比10倍に
2018.03.16
PVeye
東京大学大学院工学研究科の松尾豊特任教授らは3月16日、寿命が従来品より10倍長いペロブスカイト太陽電池を作製したと発表した。電池内で使う有機半導体に吸水性の低い新素材を混ぜたという。水や酸素に弱く、耐久性が課題の同電池だが、実用化に向けた開発が進むかもしれない。
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造の溶液をガラスや酸化チタンの多孔膜などの上に塗布して製造される。主流のシリコン結晶系太陽電池と比べ、高い変換効率や安価な製法が期待できるが、水や酸素に弱く、耐久性に課題を抱え、実用化には至っていない。
ペロブスカイト太陽電池の構造は、表面ガラスの上に透明導電膜と多孔膜をのせ、発電層のペロブスカイト溶液を塗布し、さらにプラスの電荷を帯びた正孔を通す正孔輸送層を形成させる。この正孔輸送層は、正孔と電子の内部結合による電力の消滅を防ぐもので、有機半導体が使用されているが、有機半導体は正孔の輸送特性が不充分で、リチウム塩も混ぜて機能を補っていた。ただ、このリチウム塩を用いると、吸湿性材料や酸素も必要となり、水や酸素に弱いペロブスカイトに悪影響を及ぼすという課題があった。
そこで、松尾特任教授らはリチウム塩の代わりに日本のベンチャー企業が開発した『リチウムイオン内包フラーレン』を用いた。この素材は、リチウムイオンが疎水性のフラーレン(C60)のなかにあるため、吸水性が低い。水や酸素の影響を最小限に抑えることができると考えたわけだ。
製造した電池に疑似太陽光を連続照射した結果、50時間かけて変換効率は上昇し、500時間かけて徐々に変換効率は下がったという。従来品は50時間で変換効率はゼロになるため、従来品の10倍の寿命を得たことになる。さらに、実用化の目途である同1000時間で変換効率の低下が10%以内という要件もクリアした。
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