ABBパワコンで相次ぎノイズ障害 JFEプラントエンジが賠償調停申し立て
2018.04.13
PVeye
スイスのPCS(パワーコンディショナ)大手ABBのPCSで相次ぎノイズ障害が発生していた問題で、PCSを購入したJFEプラントエンジがABBジャパンに損害賠償を求める調停を東京地裁に申し立てた。係争に発展しかねない事態だ。(PVeye記者・中馬成美)
問題が発覚したのは2015年12月。佐賀県内の工場地帯に建設された出力1MWの太陽光発電所が稼働して間もない頃である。太陽光発電所と系統網を共用していた他の工場の配電系統に設置されたコンデンサに異音が生じたのだ。
九州電力が調べたところ、ABBの大型PCS『PVS800』から発生する高調波ノイズの影響と判明。日本法人のABBジャパンは被害のあった工場の配電系統にノイズを低減するリアクトルの設置を提案したが、同設備の設置には停電作業などが伴うことから九電と工場が拒否。そのため、EPC(設計・調達・建設)を担当したJFEプラントエンジがPCSの変更費用などをすべて負担して問題を収束させた。
しかし、問題はこれにとどまらなかった。16年2月、JFEプラントエンジは同じく佐賀県内で出力1MWの太陽光発電所を建設したが、ここでも被害報告を受けた。九電は太陽光発電所付近の配電系統で電力線を通信回線として使うPLC(電力線搬送通信)を導入し、電力を制御していたが、その周波数帯に太陽光発電所から発生する高調波ノイズが干渉していたのだ。
九電ら関係者が詳しく調べたところ、またしても原因はABBの大型PCS、PVS800から発生する高調波ノイズだった。ABBジャパンはノイズを発生させた大型機の代わりに中小型機による分散設置を提案したが、それでは設計をやり直さなければならなかった。結局、JFEプラントエンジが自費で他のPCSに交換、発電事業者に対する売電損失の賠償金も負担して事態を収めた。
これら2つのノイズ問題で、JFEプラントエンジは、大型PCS2台の交換費と売電損失による賠償金などを含め、総額1.2億円もの損害を被った。いずれも、ABBジャパンが販売したPCSのノイズ障害が問題であるにもかかわらず、EPCを担当したJFEプラントエンジがすべて責任を負うというのは不公平のように思えるが、ABBジャパンソーラーグループプロダクトマーケティングマネージャーの佐藤誠記氏はこう説明する。
「あくまでも系統設備との互換性の問題であって、製品の不備ではない。製品は系統連系要件を満たしていた。技術的な解決策を助言したが、提案を受け入れてもらえなかった」。
確かに、PVS800は、一般的な系統連系の要件を満たしていたようだ。例えば、東京電力の系統連系要件には、「発電設備からの高調波流出を交流側定格電流に対し総合電流歪み率5%以下、各次電流歪み率3%以下に抑制すること」と定められており、PVS800の製品仕様を見ると、要件の値を下回っている。
とすれば、一連の問題は、PCSが原因ではなく、設置環境の問題であって、それを事前に熟知していなかったJFEプラントエンジに問題があったのか。
ABBパワコン、過去に同様の被害多数か
だが、新たな事実が浮上した。ノイズを発生させたABBのPVS800、実は今回の問題が発覚する前にも高調波ノイズ障害を発生させていたのだ。しかも数件ではない。JFEプラントエンジがABBジャパンから受けた報告によると、コンデンサの異音被害は20件以上もあったという。
これについて、ABBジャパンは、過去にも高調波ノイズ障害があったことは認めたが、佐藤氏は、「PLC設備すべてに高調波の影響が起こるわけではなく、ごく限られた条件下で障害が発生する可能性があった」とし、「問題が生じた場合は、EPC企業と協力して解決してきた」という。
ならば、PVS800をJFEプラントエンジに販売する際、ABBジャパンはノイズ障害が起こり得るリスクを事前に説明しておかなければならないはずだが、どうだったのか。
JFEプラントエンジは、「ABBジャパンは説明責任を果たしていない。事前に説明があればABBのPCSを選ばなかった」と憤り、ABBジャパンに賠償責任を求めようとしている。
ABBジャパンの佐藤氏は、「電力会社の系統運用がブラックボックスなので対策について知ることができず、個別対応するしかなかった。系統設備の互換性の問題で高調波障害が発生する可能性については、事業者とEPC企業に一貫して注意を促してきた」とするに止め、JFEプラントエンジに対して事前に説明したかどうかについては、「コメントできない」と答えた。
一方、PCS技術に詳しいある商社筋からは、「ABBの一部PCSは、制御の特性上、高調波によってコンデンサが共振してしまう可能性が高い」との証言もある。ABBの大型PCS、PVS800を採用したEPC企業や発電事業者は、今一度注意が必要かもしれない。
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